離れて暮らす老親のことが気にはなっていても、忙しさに追われ、なかなか様子を見に行けない。そんな人も多いのではないでしょうか。しかし、「元気そうだから大丈夫」と思っていた親が、わずかな期間で急激に衰え、誰にも看取られずに最期を迎えてしまう……。そんな現実が、すぐ隣に潜んでいるかもしれません。今回は、まさにそのような事態に直面した伊藤さん(仮名)のケースをもとに、ファイナンシャルプランナーの小川洋平氏が、高齢者の独居暮らしと資産管理の落とし穴について詳しく解説します。
母の葬儀から1年、独居暮らしになった75歳父〈財布の中身2,000円〉〈貯金残高20万円〉で死去。食べ物の腐敗臭が充満する“ゴミ屋敷状態”の部屋に埋もれていた「数冊の通帳」に息子、愕然【CFPの助言】
高齢者の独り暮らしと資産管理の必要性
伊藤さんの父のように、配偶者の他界により生きる気力を失うことも少なくありません。独りになったことで無気力となり、それがきっかけで認知症になったり、精神疾患に罹ってしまったりすることもあります。
中には、伊藤さんの父のように部屋片付けられなくなり、ゴミ屋敷のような状態になってしまうことも。このような場合、特殊清掃が必要になり高額な費用がかかるだけでなく、預金や金融資産の所在がゴミに埋もれたまま気づかれないということもあります。
仕事や家庭の事情で、頻繁に親の様子を見に帰省する時間はないという人も多いでしょう。ですが、高齢者の一人暮らしでは、あっという間に変化が
直接訪れるのが難しくても、たまに電話をすることはできるはずです。会話の様子が少しおかしいと思ったら、親が居住するエリアの地域包括支援センターに相談し、外部の力を借りながら今後の対応を考えてみることも大事です。
また、逆に親側の立場として考えておかねばならないこともあります。判断能力や認知能力は年齢と共に確実に衰えていくものです。自分にもいつかそんな時が来ると考え、早めに備えておく必要があります。
・資産の状況がわかるように一覧を作る
・預金口座や保険契約等の資産ごとに、何のためのお金なのか目的を明示しておく
・何かあったときに家族や後見人が管理できるようにしておく
これらは、自分の財産が「埋もれてしまう」ことを防ぐとともに、残された家族が困らないようにするための備えでもあります。
「高齢期の資産管理」と「離れて暮らす老親の見守り」の重要性
今回のような事例から学べることは、「高齢期の資産管理」と「離れて暮らす老親の見守り」の大切さです。
近くに住んでいて、いつでも様子を見に行けるようであれば、話し方や見た目から親の変化にすぐ気づくこともできるでしょう。しかし、離れていると異変はなかなか伝わり難いものです。
高齢者の財産を狙う悪徳業者も多く、財産管理が甘いことで、そういった業者に騙されて大金を失ってしまう可能性もあります。
これらを考慮すると、高齢期の資産管理は、認知症や要介護状態、判断能力が低下した状態を見据え、適した金融商品を活用すること。そして、いざ自分がそうなったときに家族が管理しやすいようにしておくことが重要です。
そして、子ども側が「親はまだまだ元気」と思っていても、別れの時はある日突然訪れることもあります。そのため、まだ元気なうちに話し合っておくことが必要です。親子間だと感情的になって話し合いにならないことも多いため、終活や相続、高齢期の資産管理に強いFPなど、知識を持った第三者を交えて話し合うのも一考です。
早めに話し合いをしておくこと、離れて暮らす場合には電話でもいいので定期的に親の状況を確認すること。必要なときには地域包括支援センターなど外部の援助を利用すること。それが、後悔しない別れを迎えるための第一歩といえるでしょう。
小川 洋平
FP相談ねっと