熟年離婚の増加とともに増加しているのが、熟年再婚です。当人同士は幸せな再出発のつもりでも、元配偶者との間に実子がいるケースでは、相続などお金の問題でトラブルに発展することも珍しくありません。 今回は再婚相手の連れ子の学費を負担したことが招いた、思わぬ実子とのトラブルとその解決策をFPの松田聡子氏が解説します。
こんなことになるとは…年収1,200万円・資産5,000万円の62歳社長、〈熟年再婚〉で幸せの絶頂。妻の連れ子に400万円の教育費援助も、実子から“まさかの不満噴出”に憔悴【FPの助言】
FPが教える熟年再婚の「お金のトラブル」回避術
敏明さんのような熟年再婚のトラブルを防ぐには、事前の準備と継続的なコミュニケーションが不可欠です。FPの視点から、具体的な対策をご紹介します。
まずは、再婚前に確認すべき3つのポイントを見ていきましょう。
第一に、再婚前に双方の資産状況をありのままに開示し、将来の生活設計を具体的に話し合いましょう。敏明さんのケースでは、「連れ子の教育費をどこまで負担するか」「介護費用はどう準備するか」「事業承継はどうするか」といった点を明確にしておくべきでした。
次に、再婚前に双方の子どもたちも交えた家族会議の開催をお勧めします。お互いの立場や不安を率直に話し合い、将来への不安を解消しておきましょう。敏明さんの場合、「会社は将来的に売却予定で、連れ子が承継することはない」「教育費負担は家族としての義務であり、特別な意図はない」といった点を最初から説明しておけば、誤解を防げたはずです。
最後に、養子縁組の是非について家族全員で検討し、方針を決めましょう。養子縁組をしない場合は、連れ子への財産承継について遺言書で明確にする必要があります。また、生命保険の受取人変更などについても整理しておきましょう。
以上を踏まえ、敏明さんの今後の対応をアドバイスいたします。
まずは家族全員での話し合いの場を設けることが急務です。敏明さんは息子たちに対して、会社の将来計画、財産分割の基本方針、由香さんへの教育費負担の方針を文書で示すべきです。感情的になりがちな問題だからこそ、冷静に事実を整理して伝えることが大切です。
長期的には遺言書を作成し、財産分割方針を明確にする必要があります。公正証書遺言にすることで、法的な効力も確保できます。また、状況の変化に応じて方針を見直していくことも重要です。
熟年再婚は人生の新しいスタートですが、お金の問題は避けて通れません。再婚前にしっかりと準備をし、家族全員の同意を得ておくと、将来のトラブルを回避できるでしょう。
敏明さんのケースも、今からでも家族で話し合い、お互いの立場を理解し合えば、関係修復は十分可能です。熟年再婚を成功させるためには、愛情だけでなく、現実的な準備と継続的なコミュニケーションが不可欠なのです。
松田聡子
CFP®