現役時代は警察署長として誠実に仕事に励み、貯金と退職金、亡き妻の遺産で資産が8,000万円に到達した三浦さん(仮名)。しかし、妻の七回忌で息子が久しぶりに実家を訪れたところ、息子は「まさかの光景」に言葉を失ったのでした……。三浦さん親子の事例をもとに、定年後の独居老人を待ち受ける恐怖をみていきましょう。辻本剛士CFPが解説します。
「年金月20万円」「貯金8,000万円」“まじめが取り柄”の65歳・元警察署長だったが…2年ぶりに帰省した40歳長男、実家の玄関を開けて目にした〈まさかの光景〉に絶句【CFPが警告】
父さん、ごめん…三浦親子の「その後」
父の変わり果てた様子に、健二さんは覚悟を決めました。
幸一さんの背中をさすりながら、母の死後なにがあったのか少しずつ聞き取りを行っていくうち、なぜ父があの日「帰ってくるな」と言ったのか、その理由が見えてきました。「情けない姿を息子に見られたくない」という思いが、「帰ってくるな」という拒絶の言葉に変わってしまったのです。
「父さん、ごめんな……寂しかったよな……」
そして、もうひとつ明らかになったのが、この2年間で2,000万円もの資産が減少していたこと。毎晩のように飲み歩き、帰宅するころには財布は空。自宅でも高級な酒や食材を注文しては、毎日のように深酒をしていたそうです。
酒をあおるたび、幸一さんの資産も湯水のように消えていったのでした。
通院やFPの助言をきっかけに、親子の関係性も少しずつ修復
その後、喪主の父に代わって挨拶や進行を務め、七回忌の法事を終えた健二さん。このままではいけないと感じ、父の医療機関への受診を促すと同時に、経済的な支援体制を整えるため、ファイナンシャル・プランナー(FP)に相談することにしました。
FPとの面談では、まずはアルコール依存症からの回復を第一にしたうえで、金銭管理の再構築として以下のルールを設定するよう提案を受けました。
・毎月の引き出し額を一定額までに制限する
・月末に、幸一さんから健二さんに対して簡単な収支報告を行う
そうして再出発を誓ってから半年。父と息子は、以前よりも頻繁に連絡を取り合うようになり、親子の関係性も少しずつ修復しつつあります。
幸一さんは、日中なるべくひとりにならないよう、地域の囲碁クラブに参加し、生活のリズムも整ってきました。現在まで飲酒を断ち、資金管理もいまのところ順調に進んでいます。
「きっかけは最悪でしたが、あれから休日余裕があるときは実家に顔を出すようにして、コミュニケーションをとるよう心がけています。父も高齢ですから、今後父になにかあっても大丈夫なように、これからもサポートできる体制を整えていきます」
親子の距離は少しずつ、しかし確実に縮まり始めていました。
辻本 剛士
神戸・辻本FP合同会社
代表/CFP