父さん、ごめん…三浦親子の「その後」

父の変わり果てた様子に、健二さんは覚悟を決めました。

幸一さんの背中をさすりながら、母の死後なにがあったのか少しずつ聞き取りを行っていくうち、なぜ父があの日「帰ってくるな」と言ったのか、その理由が見えてきました。「情けない姿を息子に見られたくない」という思いが、「帰ってくるな」という拒絶の言葉に変わってしまったのです。

「父さん、ごめんな……寂しかったよな……」

そして、もうひとつ明らかになったのが、この2年間で2,000万円もの資産が減少していたこと。毎晩のように飲み歩き、帰宅するころには財布は空。自宅でも高級な酒や食材を注文しては、毎日のように深酒をしていたそうです。

酒をあおるたび、幸一さんの資産も湯水のように消えていったのでした。

通院やFPの助言をきっかけに、親子の関係性も少しずつ修復

その後、喪主の父に代わって挨拶や進行を務め、七回忌の法事を終えた健二さん。このままではいけないと感じ、父の医療機関への受診を促すと同時に、経済的な支援体制を整えるため、ファイナンシャル・プランナー(FP)に相談することにしました。

FPとの面談では、まずはアルコール依存症からの回復を第一にしたうえで、金銭管理の再構築として以下のルールを設定するよう提案を受けました。

・毎月の引き出し額を一定額までに制限する

・月末に、幸一さんから健二さんに対して簡単な収支報告を行う

そうして再出発を誓ってから半年。父と息子は、以前よりも頻繁に連絡を取り合うようになり、親子の関係性も少しずつ修復しつつあります。

幸一さんは、日中なるべくひとりにならないよう、地域の囲碁クラブに参加し、生活のリズムも整ってきました。現在まで飲酒を断ち、資金管理もいまのところ順調に進んでいます。

「きっかけは最悪でしたが、あれから休日余裕があるときは実家に顔を出すようにして、コミュニケーションをとるよう心がけています。父も高齢ですから、今後父になにかあっても大丈夫なように、これからもサポートできる体制を整えていきます」

親子の距離は少しずつ、しかし確実に縮まり始めていました。

辻本 剛士
神戸・辻本FP合同会社
代表/CFP