実家の玄関を開けると…目に飛び込んできた「衝撃の光景」

そして当日、実家の玄関を開けた健二さんは、膝から崩れ落ちそうになるほどの衝撃を受けます。そこで目にしたのは、変わり果てた父の姿でした。

背中は丸まり、お腹は出て、髭は伸び放題……部屋は散らかり、床には飲みかけの酒や空き瓶が大量に転がっています。

父はしばらく見ないうちに、母を失った喪失感と孤独から、心の隙間を埋めるように酒に頼るようになっていたのです。あれほど厳格で綺麗好きだった父が酒に溺れて苦しんでいる姿に、健二さんは言葉を失ってしまいました。

高齢者は「アルコール依存症」に陥りやすい?

高齢者がアルコール依存症に陥る背景には、加齢にともなう生活環境の変化があります。特に、定年退職や配偶者との死別といった大きな喪失体験が引き金となり、寂しさや虚無感を紛らわせるために飲酒に頼るケースは少なくありません
※久里浜医療センター「アルコール依存症の診断基準」

また、今回の幸一さんのように、もともと真面目で誠実な性格の人ほど依存症になりやすい傾向があります。責任感が強く、他人に頼ることができず、自分のなかで苦しみを抱え込んでしまうことが多いためです。

アルコールやギャンブルなど、依存症に共通する特徴的な性格傾向は以下のとおりです。

・完璧主義

・柔軟性がなく不器用

・頑張り屋である

・まじめで働き者

・優しく人がいい

※出所:法務省「依存症に対する正しい理解と必要とされる支援について」より

こうした性格の持ち主は「依存症とは無縁に見えるタイプ」と思われがちですが、内面にストレスを抱えやすく、なんらかのきっかけで一気にバランスを崩すことがあります。

アルコール依存症が進行すると、判断力の低下や金銭感覚の乱れが生じ、散財に走るケースも少なくありません。ギャンブルなどに手を出すこともあり、最悪の場合は自己破産に至ることもあります。

こうした依存症からの回復には、専門医による治療が不可欠でしょう。さらに、本人だけでなく家族の理解と協力も欠かせません。経済的な問題が併発することもあるため、生活費や資産管理の見直しなど、金銭面での対処もあわせて行うことも大切です。