定年前に知らないと損する「失業手当」の落とし穴

「失業手当」とは、正式には雇用保険の基本手当のことを指します。離職した際に再就職までの生活をサポートするために支給される給付金のことです。

失業手当を受給するには、下記のような要件があります。

〈失業手当の受給要件〉

・離職時65歳未満

・離職の日以前2年間に、通算して12ヵ月以上雇用保険の加入期間がある(一般の離職者の場合)

・就職しようとする積極的な意思があり、求職活動を行っているにもかかわらず「失業の状態」にある

失業手当は「基本手当日額×所定給付日数」で計算されます。基本手当日額は、原則として離職した日の直前の6ヵ月間の賃金(賞与等は除く)の合計額を180で割って算出した金額のおよそ45%~80%です(上限額あり)。

また、特定理由(会社の倒産や解雇など)を除く一般の離職者の場合、所定給付日数は最大150日です。なお、150日分給付を受けるためには、雇用保険の加入期間が20年以上ある必要があります。

失業手当は上記のように「離職時に65歳未満であること」が支給要件のため、伊藤さんのように60歳で定年退職したのち、再雇用で5年間働き、65歳で退職した場合は受給することができません。その代わり、要件を満たせば「高年齢求職者給付金」を受給することができます。

「高年齢求職者給付金」の受給要件は、下記のとおりです。

〈高年齢求職者給付金の受給要件〉

・離職時65歳以上

・離職の日以前1年間に、通算して6ヵ月以上雇用保険の加入期間がある

・就職しようとする積極的な意思があり、求職活動を行っているにもかかわらず「失業の状態」にある

高年齢求職者給付金の金額についても、通常の失業手当と同様に「基本手当日額×所定給付日数」で計算されます。

通常の失業手当と異なる点は、一時金であることと、所定給付日数です。高年齢求職者給付金の場合、被保険者期間が1年以上の場合は50日分、被保険者期間が1年未満の場合は30日分となります。

つまり、64歳で退職した場合と65歳で退職した場合では、受給可能な金額が大きく異なるということです。

今回のケースでは、65歳を迎えてから退職した伊藤さんは「高年齢求職者給付金」を、65歳になる前に退職した木村さんは「失業手当」を受給していたのでした。