同じ会社で約40年間働いた同期の2人。65歳まで働いた山田さんと、それより1ヵ月早く退職した田中さん。実は、この「たった1ヵ月の差」で雇用保険の受給制度が大きく変わることに。家族の介護という切実な理由で早期退職を選んだ田中さんの判断を例に、アラカン世代の“最適な退職タイミング”についてFPの三原由紀氏が解説します。
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え?なんで?…退職金が「100万円」も減るのに、65歳直前で辞めた同期。謎が深まるも、労いの席で聞いた“知られざる事実”に「最良の選択」と納得したワケ【FPが解説】
アラカン世代が知っておくべき「65歳の壁」の現実
田中さんが受給しているのは、雇用保険の基本手当(失業給付)です。雇用保険法では、失業状態を「労働の意思及び能力を有し、職業に就くことができない状態」(第4条第3項)と定義しており、受給にはハローワークでの求職登録や、求人応募などの求職活動の実績が必要です。
重要なのは、退職のタイミングです。65歳の誕生日(厳密には前々日)までに退職すれば、定年退職でも基本手当を受給できます。一方、65歳の誕生日以降に退職すると「高年齢求職者給付金」(一時金)しかもらえません。
以下、両者の比較です。
■山田さん(65歳で定年退職)のケース
・退職金:2,180万円
・ 雇用保険:高年齢求職者給付金(一時金)7,420円×50日=37.1万円
■田中さん(64歳11ヵ月で退職)のケース
・ 退職金:2,080万円(▲100万円)
・ 雇用保険:基本手当 7,420円(※)×150日=111.3万円
(※)基本手当日額は離職した日の直前の6ヵ月、毎月決まって支払われた賃金から算出した金額です。詳細はハローワークまたは厚生労働省の公式サイト(https://www.mhlw.go.jp)でご確認ください。
トータルでは、山田さんが2,217.1万円、田中さんが2,191.3万円で、差額は約26万円。田中さんは、再就職先が見つかるまでの経済的な差を最小限に抑えつつ、妻の体調を支えながら求職活動を進める時間を確保できたのです。
田中さんのように、家族の状況を考慮し、柔軟な働き方を模索するケースでは、早期退職が合理的な選択となり得ます。