深刻化する「8050問題」の実態と、支える家族の重い負担

和代さんのケースは決して特殊な例ではありません。80代の高齢の親が50代の引きこもりの子どもを支える「8050問題」は、今や深刻な社会問題となっています。

内閣府が2022年11月に実施した調査では、40歳から64歳の引きこもりは約85万人と推計されており、15歳から39歳の約61万人を上回る結果となりました。

引きこもりはかつて若年層特有の問題と考えられていましたが、実際には当事者の高齢化が進んでいます。若いころから引きこもり状態が続いている人や、達夫さんのように就職後に職場でつまずいて引きこもりになった人が、そのまま中高年になるケースが増加しているのです。

最も深刻なのは、高齢親の年金に依存する家計の構造です。和代さんの母親のように年金23万円があっても、二人分の生活費を考えると決して余裕があるとはいえません。むしろ23万円は恵まれているケースで、多くの年金受給世帯では年金だけで老後の生活費をまかないきれないのです。

さらに、親が要介護状態になれば医療費や介護費用が重くのしかかります。貯蓄1,800万円があっても、介護が長期化すれば急速に目減りしていくでしょう。

また、親の死後に無収入になった場合、引きこもりの子は生活保護の申請が現実的な選択肢となりますが、兄弟姉妹への扶養照会が実施されます。

扶養照会とは、生活保護を申請した人の親族に対して、自治体が「経済的な援助ができるかどうか」を問い合わせる手続きです。その際には、「どこまで支えるべきか」という重い選択を迫られます。

もし、生活保護が受けられない場合、兄弟が共倒れになるという最悪の状況に陥りかねません。そのような事態を避けるには、和代さんが早めに対策を講じる必要があります。