公的年金には、原則65歳以降に支給される「老齢年金」のほか、配偶者が亡くなった場合に遺族が受け取ることのできる「遺族年金」があります。しかし、この遺族年金について、致命的な“勘違い”をしている人が少なくないようです。夫を亡くした68歳女性の事例をもとに、遺族年金の仕組みと注意点についてみていきましょう。FP Office株式会社の岩倉由記子氏が解説します。
あれ、記帳ミスかしら…年金月7万円の68歳女性、愛する夫からの“最後のプレゼント”に困惑。通帳を思わず二度見したワケ【FPの助言】
A子さんの致命的な“誤算”
実はA子さん、遺族年金として夫の生前の年金額をそのまま受け取れると思っていたのです。
自宅のローンが済んでいるとはいえ、光熱費・食費・医療費・交際費をあわせると月に12~13万円はかかります。足りない分は預金から切り崩すしかありません。
持病の通院にかかる費用や薬代、知人の法要への香典出費……。気づけば1年足らずで、1,500万円あった預金は1,300万円台へと減少していました。
「このままじゃ80歳までもたない……いったいどうすればいいの?」
不安と焦りに包まれたA子さんは、知人の紹介を受けてファイナンシャルプランナー(FP)に家計相談を行う決意をしました。
A子さんの資産寿命を延ばす3つの策
相談を受けたFPは、A子さんの生活状況や支出内訳を詳細にヒアリングしたうえで、3つの具体的な改善策を提案しました。
1.生活費の見直し
A子さんの家計収支を確認したところ、通信費や保険、新聞費といった改善の余地のある固定費がありました。そこで、まずは固定費を中心に生活費を見直すことに。
特に、毎月のスマホ代が7,000円近くかかっていたため、格安SIMへの乗り換えを提案。これにより、年間約5万円の節約が可能となりました。
また、加入していた終身保険や医療保険は、保障内容と掛け金のバランスが悪かったため、こちらも見直しによって月3,000円の負担軽減を実現しました。
2.公的支援制度の活用
また、高額療養費制度をはじめとした「公的支援制度」の活用を提案しました。
「高額療養費制度」とは、医療機関や薬局の窓口で支払った額が、ひと月(月の初めから終わりまで)で上限額を超えた場合に、その超えた金額を支給する制度です※。持病で定期的に通院しているA子さんは医療費が一定額を超えた分は還付申請することで、高額療養費の支給を受けることができます。
※ 出所:厚生労働省保険局「高額療養費制度を利用される皆さまへ(平成30年8月診療分から)」
また、夫が亡くなったいま、A子さんはひとりで生活していかなければなりません。そこで、「介護予防教室」や「配食サービス」など、自治体の高齢者向け福祉制度を活用することで、自立した生活を送れるよう支援を受けることをすすめました。
さらに、万一に備えて「生活保護予備申請(老齢加算や医療扶助含む)」についても情報提供を行いました。