プロレスラーでラーメン店「麺ジャラスK」店主の川田利明が、著書『プロレスラー、ラーメン屋経営で地獄を見る』(宝島社)で自身の経営苦悩を赤裸々に綴った。本抜粋では、ラーメン業界の厳しい現実と、店を続けるために意地を張った結果訪れた経済的・精神的苦境を明かす。
(写真/タイコウクニヨシ)
《プロレスラー川田利明》ベンツを売って保険も解約…3年以内に8割以上が消えるラーメン屋経営で、金を溶かしながら15年続けてきた「たった一つの理由」
「やめる勇気」を持てないなら開業してはいけない
そう考えて、俺は意地を張ってしまった。意地を張るって、簡単に思えるかもしれない。ひたすらギブアップしなければいいんだろう、と。プロレスではそうだった。骨が折れてもギブアップしなければ負けにはならないから、俺はリングの上でめいっぱい意地を張りまくった。
でも、ビジネスの世界では違う。店を維持しようとしたら、とにかく金がかかる。つまり「意地を張る=金を遣う」ということなのである。いや、正確には「意地を張る=必要以上に金を失う」。つまり、意地を張れば張るほど、精神的にも経済的にもボロボロになっていくのだ。だから、これから起業を考えている人には、とにかく意地だけは張ってほしくないのだ。
俺みたいにベンツを売却し、保険を解約してまで、店を続けていくのは決して得策ではないし、「ダメだ」と感じたら、早めにギブアップしたほうがいい。起業する前から失敗することを考えるなんて縁起でもない、という方もいるかもしれないけれど、成功するなんていう「夢」を見るよりも、ひょっとしたら失敗するかもしれないという「現実」に向き合えなかったら、俺みたいに無駄に意地を張って、苦しむ未来しか見えてこない。
だから、絶対に意地だけは張るな。ギブアップをする勇気なんてない、という人は、そもそもラーメン屋をやろうなんて考えてはいけないんだ。
川田 利明
「麺ジャラスK」店主、プロレスラー
