タイパ・コスパが重要視される現代、仕事を早く終わらせ、納期を遵守することは信頼感を生みます。では、仕事をスピーディーに終わらせるにはどうすればよいのでしょうか? 本稿では、秋田道夫氏による著書『仕事と人生で削っていいこと、いけないこと』(大和出版)から一部抜粋・再編集し、仕事を早く終わらせるために、削れることと、削ってはいけないことを解説します。

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「何をしないか」から優先順位を決めるべき
優先順位で大事なのは、何を最初にするかではなく、何をしないかを決めることです。わたしの場合、やらなくていいものは視界に入りません。優先順位のランキング外にあります。頭の中にはいつも多くて3つのことぐらいしかなく、それ以外の雑多なことは「未決裁の箱」に入れてしまうような感じです。
そして、やらないものは、見えるところに置かない。書類は目に入ると気になるので、とにかく目の前から消します。座っている場所の後ろに置くだけでもいいのです。これ、意外ですけど、後ろにあると気にならなくなります。とにかく人は目の前の情報に惑わされるので、考えごとをしたいときは、他人が書いた書類は目の前に置かないようにしています。もちろん仕事の段取りを考えるときも、優先順位ではなく、「しないリスト」「しないこと」を決めたほうがいいですね。
なぜなら、「何を優先すべきか」は変わる可能性があるからです。ある案件を突然「前倒しにしてくれ」と言われれば、優先順位はくるりと変わります。あらかじめ自分が決めてしまうと融通が利かなくなるので、「やらなくてもいいものだけ決めて、3、4位は同着」としておいたほうが、後々助かります。
いろいろな面で、自分で決めつけないことは大事だと思います。「主体的になって決めなさい」と提唱する本もたくさんありますが、現実問題として、複数の人が関わる仕事ではそうはいきません。やはり、自由でいるには不自由も受け入れないといけないのです。
デザイナーが「締め切り」を早めに設定しているワケ
仕事の締め切りは、だいたい自分で決めます。
たとえば「20日先」と言われたら、わたしの中で「14日先」に設定します。普通に予定されているスケジュールより、自分がやる部分は短めにするために、「時間をかける必要はないです」というふうにする。そうすると攻めの気持ちになるというか、受け身ではなくなります。気持ちの負担も減ります。だから早め早めにする。別の本でも書いていますが、わたしの場合、50%ぐらいの気持ちでやっても8割ぐらいは達成できてしまいます。
でも、本当に大事なのはそこから先。その先が難しい。その先の90%がそれまでの倍の時間がかかるし、95%にするにはまた同じぐらいの時間がかかります。急に難しさの度合いが上がるのです。まず大事なのは、お互いに「見える化」すること。
取引先がデザイナーに対して抱くイメージは、「デザイナーってわけのわからないことを言う人種」「どんな形を作ってくるかわからない」というのが一般的です。「やりたいことがバーンと決まっていて、あまり相手の話を聴かない」という先入観があるので、おっかなびっくり打ち合わせをする、というケースが多いのです。ところが、わたしは案外、人の言うことを聴くようで、逆の意味でびっくりされます。一方的にではなく、相手を尊重しながら、スピーディーかつ主体的に仕事を進めていく。そこがミソです。
秋田 道夫
プロダクトデザイナー