公共の場を本来の目的とは違う用途で活用すると、なかには迷惑に感じる人も。捉え方は人それぞれなので、すべての人が完璧に安心して利用できる公共の場を成り立たせることは難しいでしょう。最も重要なことは、いろんな捉え方をする人がいることを理解することかもしれません。本稿では、人気プロダクトデザイナー秋田道夫氏の著書『仕事と人生で削っていいこと、いけないこと』(大和出版)から一部抜粋・再編集し、スマホやPCとの適切な付き合い方をみていきます。

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「スマホ」と共に生活する時代…切り離すのは逆効果
スマホやテレビの見すぎをなんとかしたい。「これだけ」と利用時間を決めても、なかなか守れない。これ、よく聞く話です。わたしは、だらだらとスマホもテレビも見るぐらいなら、徹底して飽きるまで見たほうがいいと思います。本当にいやになるまで。それでも変わらないなら、それはひとつの「才能」だと思います。ですから、あえて「徹底的に見てみる月」を作ってもいいかもしれません。
今から10年ぐらい前に、大学でデザインを学ぶ学生のみなさんに「スマホと暮らす」という課題を出したことがあります。わたしは「楽しくスマホといい関係で過ごすのに役立つ製品」を考えてほしいと思って課題を出したのですが、多くの学生さんが「一定時間経つとスマホを使えなくなる装置」といったものを考えていて、スマホを使っていることに対して、大人が好意的に思っていないような「勘ぐり」をしたようで、びっくりしました。もちろん、なかにはスマホスタンドなど、快適に使える作品もありましたが。
スマホを否定することを前提とした受け止め方を残念に思って、「みなさんの本心と真逆ですね。なぜ『使ってはいけない』と思ったんですか」と提言しました。というのも、わたし自身はスマホを敵だとは全然思っていないからです。実際、今は、公共料金や税金の申請までスマホで操作したほうがやりやすい時代になりましたから、「楽しくスマホを使って、いい関係で過ごす」という捉え方は「時代の流れに沿っていた」と思います。でも、その日のわたしの言葉は、彼らにとっては目からウロコというか、寝耳に水ぐらいにショックだったようです。
デザインは「次の時代の当たり前」を考えないといけない仕事です。スマホはもはや日常に欠かせないものになっているのだから、無理に切り離そうとするより、楽しく快適につきあう方法を考えたほうが建設的ですよね。
秋田 道夫
プロダクトデザイナー