大手企業を退職した人の多くは、中小企業やベンチャー企業に再就職する傾向にあります。シニア転職の世界では、大手企業で長いキャリアを積んできたとしても、必ずしも即戦力として迎えられるわけではありません。中小企業への転職で気をつけておきたいことについて、大塚寿氏による著書『会社人生「55歳の壁」突破策』(かや書房)から一部を抜粋・再編集し解説します。

「大手出身でも、こんなもんかよ」大手→中小企業へのシニア転職で立ちはだかる〈2つの壁〉【元リクルート社員が解説】
あるもので最大限成果を出す
「〇〇では~」と前職でのやり方を言ってはみたところで、それを実現できるヒト、モノ、カネ、情報があれば、「いいヒント」になるかもしれませんが、実現性が乏しいと、単なるないモノねだりになってしまいます。
ですので、ここはある意味パラダイムシフトで、現有の「ヒト、モノ、カネ、情報」×自分で最大限成果の上がる計画からスタートしましょう。
開発のための設備も試作品の測定のための計測器を自前で持っていなくても、どこかの計測器を借りるなり、計測を外注するなど、知恵を絞って進めなくてはなりません。
前職と比較せず、ゼロセットで、今あるものを使って、育てて、成果を出す方法を思案していく覚悟が大切になります。
大手から中小へ、2つ目の壁は“守備範囲”
大手企業出身者が中小に移った際に直面する二つ目の壁は、「守備範囲の広さ」です。
よく「歯車」という言い方をしますが、大手企業は求められる仕事の守備範囲は歯車のほんの小さな一つであって、狭い領域で済まされているのです。
例えば、最も守備範囲の広そうな「総務部」でさえ、「ファシリティー担当」といった具合に細分化されているのです。
ところが中小企業では、すべての総務部の機能にさらに、財務、経理、人事の機能がくっついて管理部になっていたりするのです。
専門分野を増やし、業務範囲を広げておく
大手企業の人事部の課長から中小企業の幹部の課長職に転職したMさんは、経理、財務の仕事まで任されるようになって、会計システム上のミスに気づかず誤って承認してしまったことがあり、慌てて経理の勉強を始めました。
まあ商学部の出身ですので、勉強して何とかなったのですが、プロパー社員は大手から転職してきた管理職を歓迎しているわけではないので、「大手出身でも、こんなもんかよ」と、冷ややかだったり、お手並み拝見だったりするのです。応援はしてくれない、ということです。
そんなことで、中小企業への転職を想定している場合は、55歳からは仕事の守備範囲を広げるために、専門分野も増やすとともに「お手伝いならできる程度」の業務範囲を広げておきましょう。
同時に、その分野で分からないことがあった時に、教えてくれる指南役を業務ごとにつくっておくことオススメしたいと思います。
大塚 寿
エマメイコーポレーション代表取締役