首都圏模試センターの2024年調査によると、首都圏の小学6年生約28万9,000人のうち、およそ20%にあたる6万人以上が中学受験をしているそうです。少子化傾向でも中学受験に挑む家庭が増えている日本。ただ、大変な努力の末に合格を勝ち取った家庭が、それで幸せになれるのかというと、どうやらそういうわけでもないようで……。2人の子を私立中学に通わせる石川亜希子FPが解説します。

こんなはずじゃなかった…世帯年収1,000万円の40代・共働き夫婦、愛する息子の「中学受験」成功に大喜び→入学後に待ち受けていた“まさかの事態”に悲鳴【FPが解説】
担任から告げられた「衝撃の事実」
「学校でも補習を行いますが、塾へ通われたほうがいいと思います。こちらが塾を勧めるのもおかしな話だとは思うのですが、正直補習だけでは足りず……。このまま対策せずにいると、高校への内部進学にも影響してくるかもしれません」
「え!? このままでは高校に進めないということですか?」
Bさんが思わず聞き返すと、教師は慌てた様子で訂正しました。
「いやいや、いま内部進学が難しいと言ってるわけではないですよ。ですが、早めに対応することに越したことはありませんから」
小テストの成績も進学に響く…私立中は「内部進学」にシビア
大学附属校は公立と比べて“のんびりとしたイメージ”を抱く人は少なくありません。しかし、実は名門の大学付属校ほど「内部進学」にシビアであるケースは多いです。
内部進学には、定期考査の成績のほか、小テストの成績やレポートなどの課題提出にかかる平常点も加味されます。このほか、英検などの資格取得を内部進学の条件としている学校もあります。日頃のテストの成績が、高校進学に影響してしまうのです。
Aさんたちは期待に胸を躍らせていた入学時から一転、暗澹たる気持ちで夏休みを迎えることになりました。
「夏休みだけ」のつもりが…
「せっかく苦労して入ったのに、内部進学できなくなっては意味がない」
AさんとBさんは夫婦で話し合った結果、Cくんを夏休みから個別指導塾へ通わせることにしました。英語と数学について、1学期の復習を中心にみっちり見てもらいます。この結果、8月だけで10万円以上の費用がかかりました。
しかし、夏休み明けに校内で行われた実力テストの結果も1学期とさほど変わらず、秋以降も週に2日、引き続き個別指導塾に通わせることに。夏休みだけのつもりが、さらに毎月6万円ほど出費が増えることとなりました。
総務省統計局の「家計調査年報令和5年(2023年)」によると、A家のような3人家族(夫婦+子ども1人)の1ヵ月あたりの生活費は平均約31万2,000円となっています。
しかし、このデータの内訳は住居費が約2万円、教育費が約1万2,000円となっていることから、ここに住宅ローン返済額や私立中に通うことでかかる費用が含まれていないことは明らかです。もちろん、Cくんが通うことになった個別指導塾の費用も含まれていません。
A家の出費は平均的でしたが、こうした費用を合わせると手取り約55万円では毎月ギリギリの収支で、貯金に回す分は捻出できません。