いまや、高齢者の住まいの有力な選択肢になっている「老人ホーム」。しかし、昭和の時代には「姥捨て山」と揶揄する人も多く、そのイメージを今なお抱いている人も。それにより、ヒドイ親子げんかに発展するケースも珍しくはありません。
親を捨てるつもりか!〈年金月15万円・86歳父〉が〈62歳ひとり娘〉に罵詈雑言。それでも「老人ホーム入居」しか選べなかった壮絶事情 (※写真はイメージです/PIXTA)

56歳女性「50代はずっと親の介護をしていました」

阿部明美さん(仮名・56歳)。実家で父・勝さん(仮名・80歳)と2人暮らしをしていましたが、先日、勝さんは老人ホームに入居したといいます。老人ホーム入居に際し、ひと悶着あったようです。

 

――「お前は親を捨てるつもりか!」と……すごかったですね、隣近所にも聞こえるくらいの大声で何度も何度も。心配したお隣さんが「大丈夫?」と訪ねてくるくらい

 

父・勝さんは要介護3で、ひとりで立ち上がったり歩いたりはできず、排せつや入浴、着替えには全面的な介助が必要です。介護が始まったのは2年前。脳卒中で倒れ、麻痺が残ったことがきっかけでした。

 

【介護度別・「介護が必要となった主な原因」上位3】

■要介護1

認知症…26.4%、脳血管疾患…14.5%、骨折・転倒…13.1%

■要介護2

認知症…23.6%、脳血管疾患…17.5%、骨折・転倒…11.0%

■要介護3

認知症…25.3%、脳血管疾患…19.6%、骨折・転倒…12.8%

■要介護4

脳血管疾患…28.0%、骨折・転倒…18.7%、認知症…14.4%

■要介護5

脳血管疾患…26.3%、認知症…23.1%、骨折・転倒…11.3%

 

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※出所:厚生労働省『令和4年国民生活基礎調査』

 

実は明美さん、父・勝さんの介護の前には、母・京子さん(仮名・享年76歳)の介護があったといいます。

 

――母もくも膜下出血で麻痺が残り、そのあと認知症にもなって。在宅での介護は4年……5年か

 

つまり、50代になってから親の介護がメインの生活だった明美さん。「もう限界」と父親を老人ホームに……というわけではありません。正確にはそれだけではなく。実は義父も介護が必要となり、明美さんの介護負担が激増したのです。

 

――夫も義兄弟も仕事がありますし、動けるのは私しかおらず……肉体的にはもちろん、精神的にもまいってしまったんです

 

わけもわからず涙が出るようになったという明美さん。異変を察知した夫が病院に連れていくと、軽症うつ病の診断。このままの生活を続けていくと症状が悪化させてしまう、今のうちにきちんと休養をとらないと、取り返しのつかないことになると厳しくいわれたといいます。

 

今後、お互いの親の介護をどうするか。夫や義兄弟とも話し合い、プロに任せるほうがいいだろうという結論に達したといいます。