もう、限界です…38歳になった長女から来た「戦慄のLINE」

月日が経ち、67歳を迎えた友里さんは、65歳から受給している毎月7万円の年金と、美希さんからの仕送り15万円で、なに不自由ない生活を送っていました。高級スーパーでの買い物や、趣味に時間を費やす日々も、もう慣れたものです。「あのとき苦労してお金をかけた甲斐があったわ」……羽振りのいい暮らしは、友里さんにとっては“幸せそのもの”でした。

しかし、その年の暮れ、友里さんが買い物袋を両手に提げて家に帰ると、リビングがやりすぎなほど綺麗に片付けられています。友里さんが驚いていると、ポケットからLINEの通知音が鳴りました。

メッセージの送り手は、娘の美希さんでした。

「このたび結婚することになりました。お相手は同僚の方で、アメリカ人です。今後は海外で生活することになるので、これ以上仕送りをすることはありません」。

「これまで勉強ばかり強いられ、褒められることもなく、いつも叱責されるばかり。あのころのことは忘れられないし、今も、これからも、許すことはないと思います。そして、社会人になったあとも当然のように仕送りを要求するあなたに、ずっとうんざりしていました。もう、限界です。この連絡をもって、親子の縁を切らせていただきます」。

ずっということを聞いてくれていた長女からの思わぬ「反撃」に、最後の一文を読み終えた友里さんは絶句。しばらく呆然と立ち尽くすしかありませんでした。

その後、美希さんからの連絡は途絶えました。毎月1日に振り込まれていた15万円の仕送りもなくなり、友里さんの生活は一変します。

「月7万円で生活なんてできない。家のことも全部彼女に任せていた。貯金もほとんどないし、どうすれば……」

今後の生活の見通しが立たず、途方に暮れる友里さんです。

窮地に陥った友里さんに、“金銭的”な解決策

今回の事例における問題点は、友里さんが美希さんからの仕送りに頼り切り、働くことも貯蓄もせずに生活を続けていた点です。

今回は美希さんが海外移住することをきっかけに仕送りが途絶えましたが、美希さん自身の病気やケガ、転職や退職、考え方の変化など、仕送りが途絶えるタイミングはいくらでもありました。

仕送りを受けているあいだにその一部を貯蓄に回すなど、将来のリスクに備えた対策を講じておけば、ここまで深刻な状況に陥ることは避けられたはずです。

現在の友里さんに対する金銭面の対策としては、FPや行政に相談することが賢明な選択でしょう。

特に行政が提供する「生活困窮者自立支援制度※1」では、無料で相談を受け付けており、以下のような支援を提供しています。

・ライフプランの作成や家計改善のアドバイス

・貸付制度や就業支援

この制度は平成27年に施行され、生活保護を受給していないものの困窮している人や、自立が見込まれる人を支援する目的で設けられたものです。

また、年金受給者であっても、年金額が最低生活費を下回る場合には、生活保護の対象となる可能性があります。生活保護※2は、国が定める最低生活費を下回る収入の方に支給される制度です。友里さんのように、年金だけでは生活が成り立たない場合には、生活保護の申請を検討することができます。

生活保護の申請については、お住まいの区の福祉事務所に連絡を取ることで手続きを進められるでしょう。生活が困難な状況に直面した場合、1人で抱え込まず、早めに専門家や行政のサポートを受けることが、生活を立て直すための第一歩となります。

<参考・出典>
※1 厚生労働省「生活困窮者自立支援制度」
(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000059425.html)

※2 厚生労働省「生活保護を申請したい方へ」
(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/seikatsuhogopage.html)

 


辻本 剛士
ファイナンシャルプランナー