「いい子に育ってほしい」というのは、子を持つ親皆の願いです。しかし、自身のコンプレックスや過去の悔しい思いから「理想」を押しつけ、「理想でない状態はダメな子だ」と子どもをコントロールするようになると、「虐待」や「毒親」の危険がはらんできます。友里さん(仮名)が毒親になった理由も、自身のコンプレックスにありました……。ファイナンシャルプランナーの辻本剛士氏が、そんな友里さんが「破産危機」に陥った原因と解決策について解説します。
せっかくいい大学に行かせたのに…〈年金月7万円〉67歳・毒母、慶大卒・商社勤務の娘からの仕送り〈月15万円〉で謳歌していた“羽振りのいい老後”が突如終焉。発端は年の瀬に届いた「戦慄のLINE」【CFPの助言】
「いい大学」に入ったのに…友里さんがなおも「執着」する理由
友里さんは、長女が周囲に自慢できるような有名大に入ったことが誇らしい一方で、なんとしてでも娘を無事に大学から卒業させ、有名企業に就職させることに執着しています。「子どもをいい大学に入れる」という目的は果たされたはずですが、一体なぜなのでしょう。
その理由は単純です。美希さんは自身の老後の蓄えを十分にしておらず、「娘が就職したら経済的に面倒を見てもらおう」と企んでいたからです。
友里さんにとって、これまで注ぎ込んできた多額の教育費は「投資」。はじめから、将来子どもたちから支援を受けることを見越して支払っていたのです。
「ここまでやったんだから、面倒を見てもらえるのは当然」……こうした思いが、彼女のなかで確固たるものとなっていました。
大手総合商社に就職した美希さんに、友里さんがした「驚きの要求」
美希さんは、大学生活の4年間、勉強とアルバイトに追われる日々を過ごしました。学費を少しでも補うために、週末や夜間もアルバイトに明け暮れ、勉強は深夜や早朝になります。友達と遊ぶ時間はほとんどありませんでした。どれだけ疲れていても、「ここで頑張らなければ未来がない」と自分に言い聞かせ、ひたすら努力を続けました。
そんな苦労を乗り越え、美希さんは大手総合商社への就職を決めました。この知らせを聞いた友里さんは大喜びです。「これで老後も安泰ね!」
美希さんの就職先は誰もが知る一流企業で、1年目の年収は500万円と、若手社員としてはかなりの高水準です。これを知った友里さんは、美希さんに給料が振り込まれるなり、こういいました。「毎月15万円、仕送りをお願いね」。
美希さんは内心、「まだこの人に貢がなくちゃいけないのか」と嫌悪感をもよおしましたが、反発してもムダだと思い、その提案を受け入れました。
すると、友里さんは驚くことに、長年続けてきた仕事を辞めてしまったのです。「これで、娘の仕送りだけで生きていけるわね」。
友里さんは美希さんからの「仕送り」を生活費に使うだけでなく、余った分は自身の趣味やちょっとした贅沢に使うようになりました。