「年金を増やすために繰下げ受給をする」という友人に影響されて繰り下げ受給する気マンマンだった63歳の会社員。しかし、妻が「繰下げ受給すると、家族手当がなくなる上に長生きをしないと損」という話を聞いてきて……一体、家族手当とは何を指しているのでしょうか? 本記事では、角村FP社労士事務所の特定社会保険労務士・CFPの角村俊一氏が、太田さんの事例をもとに解説します。
ムムッ…5年間で200万円の「家族手当」がもらえなくなるってどういうことだ?繰下げ受給する気マンマンだった63歳サラリーマンが気付いた年金の〈落とし穴〉とは?【社労士の助言】
繰下げても長生きすればいいけれど…
老齢年金の受給を70歳まで繰下げた場合、原則通り65歳から受給した年金額を上回るのは約12年後です。つまり、太田さんは82歳以上まで長生きして年金を受け取らなければ「損」をしてしまいます。
そして、受け取れなかった加給年金。太田さんの年金の増加分は年間75.6万円です。受け取れなかった加給年金は約200万円ですから、それを取り戻すのにはさらに約2.6年かかります。よって、太田さんが85歳程度まで長生きしなければ65歳から受け取ったほうが「得」だったとなるのです。
ちなみに、2023年の男性の平均寿命は81.09歳。これが町内会の班長が言っていた「旦那が平均寿命で亡くなったら損するだけよ」の意味です。
最後に年金の繰下げ受給のデメリットを挙げておきましょう。
- 長生きできなければ、65歳から受給した場合の年金総額の方が多くなる。
- 繰下げ受給により年金額が増えると税金や社会保険料も増えるため、思ったよりも手取り額が少なくなることがある。
- 年金の繰下げ請求をすると取り消すことはできない。
- 老齢厚生年金の繰下げ待機期間中は加給年金を受給できない。また、加給年金は繰下げても増額されない。
こうした点を理解したうえで、老齢年金の繰下げ受給は考えたいもの。太田さんは繰下げ受給に関する情報を知り、もう一度、65歳以降の生活設計を考えてみようと思ったのでした。
角村 俊一
角村FP社労士事務所代表・CFP