肉親が亡くなると、葬儀や相続など数々の対応を迫られることがあります。そのような場合、事前知識や故人による生前準備が不足していると、思わず「こんなはずじゃなかった」という事態になりかねません。離れて住む親子の事例をもとに詳しくみていきましょう。牧野FP事務所の牧野寿和が解説します。※プライバシー保護のため登場人物等の情報を一部変更しています。
月収14万円・市営住宅暮らしの49歳シングルマザー〈年金6万円・貯金ナシ〉の父急逝で〈家族葬〉を決断…“娘のための定期預金”を解約も「後悔はしていません」と笑顔のワケ【CFPが解説】
父の家にあった金庫…“衝撃の中身”に驚き
葬儀会社や叔母と相談の結果、亡き父Bさんにかかる葬儀費用は、寺院費用を含めて約70万円に。一般葬と比べると費用は抑えられたかもしれません。しかし、突如として月収5ヵ月分もの大金を支払わなければならなくなったAさんは頭を抱えました。
Aさんはシングルマザーで、都内で生活しているひとり娘(25歳)がいます。Aさんは、少ない収入から「娘が結婚するときに援助やお祝いを贈れるように」「自分になにかあったときに、娘に迷惑をかけないために」と、“へそくり”として定期預金を行っていましたが、今回の葬儀費用はやむなくここから捻出しました。
「こんなはずじゃなかったのに!」
Aさんは落ち込みながら、遺品整理のため実家へ向かいました。仕事の合間に片づけをはじめてから数週間後、Bさんが使っていた机の引き出しのなかに「手提げ金庫」を発見。その金庫には鍵がかかっていないようです。
「期待してはいけない」と思いながら金庫を開けると、なかには通帳が入っていました。通帳を確認したところ、父は貯金をほとんどしておらず、年金も月およそ6万円だったことがわかりました。
(え、たったこれだけ? お父さん、ちゃんと生活できていたんだろうか……)
がっかりした気持ちよりも、生前なかなか気にかけてあげられなかった後悔の念が押し寄せてきます。
しかし、金庫には通帳以外に、証券会社からの書類も入っていました。そこには、大手企業数社の株式運用成果の記載が。年金以外にも、株式の売買益と配当金で、単身とはいえ十分に生活が維持できていたようです。
さらに、金庫のふたの裏には、「Aと孫とで大切に使え」と、まるで自分が亡くなることを予見したようなメモが貼ってあります。
「父さんなりに、私たちのことを考えてくれていたのか……」
驚きながらも、ほっとひと安心のAさんです。
しかし、株式投資をしていたとなると、今度は相続税のことが心配になってきました。叔母に相談したところ、知り合いのファイナンシャルプランナーである筆者を紹介してもらったAさんは、筆者のFP事務所に相談に訪れました。
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