例えば社員数40人の会社や学校のクラスなどの集団があったとして、自分と同じ誕生日がいる人の確率は?と言われたら「そんな偶然はないだろう」と思う人が多いのでは?京都大学大学院医学研究科健康増進・行動学分野准教授の田近亜蘭氏による著書『その医療情報は本当か』(集英社)から一部抜粋し、我々人間が誤った判断をしてしまう原因でもある「認知バイアス」について詳しく解説します。
40人の社員がいる会社で誕生日が同じ人がいる確率は11.7%?それとも89.1%?「誕生日のパラドックス」が教えてくれる、感覚や推測だけでものごとを判断する危険性【京大大学院准教授が解説】
誕生日が同じ人はこの中にいる?
次に、統計学や確率を面白く紹介するときに用いられる例に、「誕生日が同じ人はどれぐらいいる?」という問いがあります。
40人の集団がいたとき、その中に同じ誕生日のペアがいる確率は、次のうちのどれだと思いますか。
(A)11.7%
(B)25.3%
(C)50.7%
(D)89.1%
正解は、(D)89.1%です。ただ、わたしの周囲の10人に尋ねてみると、全員が(A)11.7%と答えました。
この確率を求める集計法や計算式はここでは重要ではないので省略しますが、(A)11.7%とは集団が10人のときの確率であり、(B)25.3%では15人、(C)50.7%は23人のときです。そして、60人が集まると99.4%の確率で同じ誕生日の人が存在することになります。
グループの中の誰かと誰かが同じ誕生日だと聞くと、「おお、偶然だな」と驚きませんか。しかし確率的には、そう感動するほどのことでもないということがわかるでしょう。これを「誕生日のパラドックス」といいます。
キャンブラーの誤謬も誕生日のパラドックスも、「感覚や推測だけでものごとを判断すると間違うことがある」という教訓を伝えています。
田近 亜蘭
京都大学大学院
医学研究科健康増進・行動学分野准教授