知人や目上の人から助言を受けた際、信頼している人であればあるほど、疑わずに信用するという人は多いのではないでしょうか。しかし、大切なことをよく調べずに、他人の情報を鵜呑みにすると“痛い目”に遭う可能性も。65歳Aさんの事例をもとに「年金ルール」の注意点をみていきましょう。牧野FP事務所の牧野寿和CFPが解説します。
ワタシの加給年金は…!? 〈年金月26万円・貯金2,000万円〉で“老後不安ゼロ”の4歳差・60代仲良し夫婦、年金事務所で発覚した“まさかの事実”に唖然【CFPの助言】
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加給年金を受け取るために65歳からできること
Aさんから事情を聴いた筆者は、まず今後のA家の収入を確認することにしました。現在65歳のAさんと61歳のBさんの場合、今後の収入は下記のようになります。
<A家の今後の主な収入>
■65歳~
・Aさんの老齢厚生年金……月12万円
・Aさんの企業年金……8万円
合計:20万円
■69歳~
・Aさんの老齢厚生年金……月12万円
・Aさんの企業年金……8万円
+Bさんの老齢厚生年金……月8万円
合計:28万円
■70歳以降~
・Aさんの老齢厚生年金……月12万円
・Bさんの老齢厚生年金……月8万円
※企業年金が終了
合計:20万円
また、主な支出は下記のとおりです。
<A家の主な支出>
・住宅ローン返済……月9万円
※Aさんが68歳になるまで
・ローン以外の生活費等……月約22万円
合計:約31万円
総務省「家計調査年報(家計収支編)2023年(令和5年)」によると、世帯主の平均年齢67.2歳の2人以上の無職世帯の家計収入は、実収入が29万6,122円(うち年金などの社会保障給付は20万9,362円)。また支出は、消費支出の29万3,909円と健康保険料や介護保険料、税金などの非消費支出の4万2,849円とで33万6,758円。毎月4万0,630円の赤字となっています。
すぐに破産の心配はなし…あと「4ヵ月」働けば、加給年金の受給も可能
これを踏まえ、筆者はAさんとBさんに次のように説明しました。
「A家の支出額は統計値より少ないといえます。住宅ローン完済後も、このままの家計収支で生活ができれば、70歳の時点で貯金が500万円は残ります。この500万円は、高齢になってから病気になった場合や介護が必要になった場合に備え、残しておきたい金額です。
また、厚生年金加入期間が不足しているという加給年金についてですが、Aさんがあと4ヵ月、厚生年金に加入できる事業所に勤めれば(パートでも可)、厚生年金の加入期間が20年(240月)となり、Bさんが65歳になるまで加給年金を受給することができるほか、4ヵ月分の収入が確保できます」
ここまで話すと、Aさんは家計がすぐにも破産することはないとわかりひと安心。それまで不安げな表情でしたが、笑みも見えました。
知り合いの話を「鵜呑み」は危険…老後の人生を左右する判断は“慎重に”
定年後の暮らし方については、誰しも悩むものです。Cさんが言うように、嘱託社員として働くにもメリット・デメリットはあるでしょう。しかし、たとえ信頼している人であっても、ひとりの意見で老後の暮らしを判断することや、推論で試算してしまうのは危険です。
「ねんきん定期便」には、国民年金と厚生年金保険料の納付月数も記載されているほか、特別支給の老齢厚生年金が受給できるなら、その受給見込額の記載もあり、自身で確認することができます。
こうした信頼できる情報をあたったうえで、不安であれば知人だけでなく、FPをはじめとした専門家に話を聞き、客観的に判断するようにしましょう。
代表社員
牧野FP事務所合同会社
牧野 寿和