知人や目上の人から助言を受けた際、信頼している人であればあるほど、疑わずに信用するという人は多いのではないでしょうか。しかし、大切なことをよく調べずに、他人の情報を鵜呑みにすると“痛い目”に遭う可能性も。65歳Aさんの事例をもとに「年金ルール」の注意点をみていきましょう。牧野FP事務所の牧野寿和CFPが解説します。
ワタシの加給年金は…!? 〈年金月26万円・貯金2,000万円〉で“老後不安ゼロ”の4歳差・60代仲良し夫婦、年金事務所で発覚した“まさかの事実”に唖然【CFPの助言】
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あれっ…加給年金が振り込まれないぞ!?
定年後は、自治会でボランティア活動をしたり、60歳を機にパートを辞めたBさんと旅行に行ったりと、悠々自適な老後生活を送っていたAさん。
63歳になると「特別支給の老齢厚生年金」の受給が始まり、65歳からは老齢厚生年金の受給もスタートしました。しかし、Cさんが教えてくれた「加給年金」は、いつまで経っても振り込まれません。
不思議に思い、配偶者のいる元同僚Dに話を聞くと、「俺んとこは65歳から、老齢厚生年金といっしょに加給年金も振り込まれているよ」といいます。
「おかしいな。なぜ自分だけもらえないんだろう。もしかしたら忘れられているんじゃないか……?」疑問に思ったAさんは、真相を確かめるために、年金事務所に話を聞きに行くことに。
年金事務所で明らかになった「衝撃の事実」
対応してくれた職員によると、加給年金が受給できない原因はAさんにありました。
「加給年金の受給要件は、「厚生年金保険の被保険者期間が240月(20年)以上必要」となっています。ですが、A様の被保険者期間は236月(19年8ヵ月)と、加入期間が4ヵ月足りていませんね。そのため、残念ですがA様は加給年金の対象ではありません」
実は、Aさんは機械製造会社に「中途」で入社。入社時から厚生年金に加入したものの、それ以前は個人経営の工場を転々としており、国民年金のみに加入していたのです。
Aさん絶句…妻Bさんの「特別支給の老齢年金」も受給対象外
さらに、職員は次のように続けます。
「また、『特別支給の老齢厚生年金』についても、A様は受給できましたが、残念ながら奥様が63歳になっても受給できません」
職員の言葉に、Aさんは思わず絶句。われに帰ったAさんが「いやいや、ちょっと待ってくださいおかしいでしょう! 不公平じゃないですか!」と声を荒らげるなか、職員は冷静に理由を話しはじめます。
「女性の場合、特別支給の老齢厚生年金は、民間企業などに勤める第1号厚生年金被保険者であれば、男性より5年遅い昭和41年4月1日生まれまで、生年月日に応じた年齢から65歳まで老齢厚生年金の比例報酬部分を受給することができます。
しかし、たとえば国家公務員や地方公務員、私立学校共済などに入られている第2・3・4号厚生年金被保険者の場合、女性も男性と同様に昭和36年4月1日生まれまでが受給の対象となります。
奥様はお子さんを産むまで公務員として働かれていたそうですから、第2号厚生年金被保険者に該当しますが、昭和38年生まれだそうですね。誠に残念ながら、この場合受給対象からは外れてしまうのです」
加給年金と妻の特別支給の老齢厚生年金、あわせて約220万円を住宅ローンの返済にあてようと計画を立てていたAさんは大慌てです。
「このままでは破産してしまう……!」
その後は職員の話も上の空で、自宅に帰るなり急いでBさんに事情を話します。そして、今後の生活について改めて計画を立てようと、知り合いである筆者のもとを訪ねてきたのでした。