食料品から生活雑貨まで私たちの日常生活を支えてくれるスーパーマーケット。値上げニュースの印象が強いものの、注目すべき新たな波が到来しています。実は日本の高齢化を背景に、大規模で大量激安がシェアを取っていた時代は終焉を迎えつつあるのです。そして今、安心、便利、快適、健康を考えた店舗設計やサービスが考案され、スーパーの新しい形が続々登場しているのです。そこで今回は、スーパーマーケットの新たな取り組みとして、最新テクノロジーやAIを活用した事例や、それらがあることによって生まれるおいしい商品をご紹介していきたいと思います。
スーパーマーケットの進化が止まらない!最新テクノロジー・AIを活用した新戦略とは? イオン提供

レジ待ち不要のスマホ決済!U.S.M Holdingsのアプリ「Scan&Goignica」

「Scan&Go」HPより引用
「Scan&Go」HPより引用

 

マルエツ、カスミ、マックスバリュ関東の共同持株会社であるユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングスが2020年から立ち上げた独自のデジタルブランドが、「ignica(イグニカ)」。この中で顧客向けサービス「Scan&Go」(スキャンアンドゴー)というアプリに注目が集まっています。

 

サービスの主軸は、自分のスマートフォンがレジになる「スマホ決済サービス」。買い物カゴに入れるタイミングでスキャンすると会計に反映され、買い物から決済までスマホひとつで完結。つまりセルフレジさえも並ぶ必要がないのです。また機能は決済だけにあらず、例えば購入商品の栄養バランスをグラフ化し、不足栄養素を補う商品をおすすめしてくれる「栄養バランス確認機能」は画期的なサービスの一つとして顧客満足度の向上に貢献しています。

ライフ「ビオラル」おいしいプラントベースフードを生み出す技術ノウハウ

セントラルスクエア恵比寿ガーデンプレイス店にあるビオラルコーナー(著者撮影)
セントラルスクエア恵比寿ガーデンプレイス店にあるビオラルコーナー(著者撮影)

 

上場する食品スーパーの中で2023年度における営業収益で業界1位に輝いたのが、ライフコーポレーション。首都圏・近畿圏を中心に312店舗を展開するスーパーマーケットです。この成長要因として挙げられるのが、ライフが持つ健康系プライベートブランド「ビオラル」の好調ぶり。“健康食品はおいしくないのに価格が高い”という従来イメージを大きく覆すようなヒット商品を続々提供しているのです。

 

ここでは、ビオラルの商品の中でも特に注目すべきプラントベースフード(植物性食品)のおいしさを実現するためのテクノロジーについて思いを巡らせてみることにしました。

 

動物性原料不使用なのに、濃厚で香り高いカレールー

BIO-RAL動物性原料不使用カレールー甘口/中辛150g各429円(税込、以下同)(著者撮影)※価格が変更となる場合がございます。
BIO-RAL動物性原料不使用カレールー甘口/中辛150g各429円(税込、以下同)(著者撮影)※価格が変更となる場合がございます。

 

植物性原料だけを使い、多くの人にとって確かなおいしさを実現するためには、熟練された製造ノウハウが求められます。ポイントは職人技と工場での製造技術を融合させて作りあげる点にアリ。

 

本商品の開発は、製造元であるエム・トゥ・エムの洋食屋時代に培った技術ノウハウを活用し、五味(旨味、酸味、塩味、苦味、甘味)のバランス調整を徹底的に追求しながら、最適な原料と加工技術を組み合わせて生み出されているとのこと。

 

もう一つは、「BIO-RAL 国産野菜で作った野菜だし 5g×9袋(429円)」。塩や砂糖を使わず、野菜(玉ねぎ、人参、にんにく、セロリ)の旨味と香りを生かしたシンプルなだしパックです。実際に飲んでみると、あまりのおいしさに驚いてしまいました。原料の足し合わせに注力される時代の中で、引き算の発想から生まれた稀有(けう)な名品と言って過言ではないでしょう。

 

BIO-RAL国産野菜で作った野菜だし5g×9袋(429円)(著者撮影)※価格が変更となる場合がございます。
BIO-RAL 国産野菜で作った野菜だし 5g×9袋(429円)(著者撮影)※価格が変更となる場合がございます。

 

これらの商品について、ノウハウや技術をどのようにデータ蓄積しているかは非開示とのことですが、熟練職人の勘や技をスーパーのPB商品として具現化している背景には、デジタル技術なくしては考えられません。

 

最新デジタルやAIを活用したスーパーマーケットの進化を実感いただけたでしょうか? その事例はますます多種多様になりつつあります。今後私たちの日常がますます便利になり、想像できないようなおいしさや楽しさが登場してくることは間違いありません。今後も引き続き注目していきたいところですね!


 

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<著者>

スギアカツキ

食文化研究家。長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを幅広く学ぶ。在院中に方針転換、研究の世界から飛び出し、独自で長寿食・健康食の研究を始める。食に関する企業へのコンサルティングの他、TV、ラジオ、雑誌、ウェブなどで活躍中。