絵心のあるなしに関係なく、誰でもプロのイラストレーター並みの絵を出力できる「画像生成AI」。個人だけでなく、企業での活用も進む一方で、著作権上の問題が懸念されています。生成した画像が第三者の絵柄と似ていた場合、著作権侵害になるのでしょうか。本稿では法律事務所Zの菅野龍太郎弁護士が、画像生成AIと著作権について解説していきます。
AIイラストの「絵柄が似ている」はセーフ?アウト?「画像生成AIと著作権」 (※写真はイメージです/PIXTA)

フィルタリングで著作権侵害は回避できる

なお、生成AIが既存著作物を学習していても一定の場合には、依拠性は認められないとされています。それは、学習に用いられた著作物と創作的表現が共通した生成物が出力されないよう出力段階においてフィルタリングを行う措置が取られている場合や、当該生成 AIの全体の仕組み等に基づき、学習に用いられた著作物の創作的表現が生成・利用段階において生成されないことが合理的に説明可能な場合です。

 

抽象的にいえば、生成 AI において、学習に用いられた著作物の創作的表現が、生成・利用段階において出力される状態となっていないと法的に評価できる場合には、AI 利用者においてこれを主張することで、依拠性がないと判断される場合はあるとされています。

 

したがって、利用者の立場としては、このような措置が取られた生成AIサービスを選択し、利用することが、法的責任を回避するための重要なポイントになり得ます。

AIイラストの今後

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

今後ますます画像生成AIの性能は向上し、これに伴い、画像生成AIが事業活動に用いられる場面は増加するものと思われます。

 

そして、既存の著作物を学習に用い、新たな生成物を生み出す画像生成AIに著作権の問題は常について回るものであり、著作権法の運用は画像生成AIの利用に大きな影響を与えることは間違いありません。

 

著作権者保護のため、画像生成AIに対する法規制を厳格にすれば、技術革新が損なわれるおそれがある一方で、文化の発展のため、著作物の公正な利用を確保し、創作意欲が失われないようにすることも重要です。

 

いずれにしても、現時点では、AIと著作権の問題について議論の段階にあり、今後の動向を注視する必要があります。

 

 

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<プロフィール>

菅野 龍太郎

アンダーソン・毛利・友常法律事務所入所後、バークレイズ証券株式会社出向、アマゾンジャパン合同会社入社を経て、法律事務所Zを設立。多数のクロスボーダーを含む訴訟・紛争解決、事業再生、M&A、金融法務、一般企業法務、相続案件等に従事しており、渉外案件に強みを持つ。また、アマゾンジャパンでの経験から、会社法のみならず決済関係法務にも精通し、新たな決済手段の導入や法令順守体制の構築も手掛ける。