※本稿は、『LABbook(ラボック)[2024年12月号]』(東京出版)より一部を抜粋・再編集したものです。
進路が見えない焦りのなか、小説の影響で医学の道に
――医学部進学を決めたのはいつですか。理由も教えてください。
歩乃香 中3のときに、友人に薦められた『リアルフェイス』というミステリー小説を読んだことがきっかけです。東京慈恵会医科大学出身の内科医でもある知念実希人さんの作品で、一気に読ませるストーリー展開に加えて、専門的な解説や手術シーンの臨場感に魅了されました。以来、夢中になり、知念さんの作品を読破しましたが、途中から将来の職業と結びつけて読んでいた気がします。
――歩乃香さんから「医学部を目指す」と聞いてどう思いましたか。
父 得意や苦手を理由に、漠然と進路を決めるのではなく、就きたい職業を視野に入れた進路選択をしてほしいと考えていたので、とてもうれしかったです。
母 中高一貫校に通っていたのですが、早くからキャリア教育を受けるためか、中3ともなると、大学やその先の進路を決め始める人が増えるのだそうです。娘が少し焦りを感じているのを知っていたので、「目指す道が定まってよかったね」と言いました。
――医学部は、他学部に比べて学費がかかりますが、マネープランはどのように立てましたか。
父 幼少期からパズルや数遊びが好きだったので、「理系に進むのかな」と考えながら用意していた分と、医学部との差額を計算して、「このくらいの大学であれば私立でも可能だよ」と本人に提示しました。学費の面では国公立大学がありがたいですが、地方の大学なら下宿する生活費がかかります。校風や卒業後の進路なども考えると、学費のことを意識し過ぎて選択肢を狭めないほうがよいと思いました。不足分は、夫婦ともにリタイヤまでの期間を少し延ばすことで賄うつもりです。
日々の学習は効率良く進め、志望校対策は予備校に相談
――医学部を目標にしてから、学習の仕方に変化はありましたか。
歩乃香 父の仕事の都合で、小学校で3年程度、海外で過ごしたこともあり、英語には苦労しないと思いました。得意だった数学と生物は「武器にしよう」とより磨きをかけました。学校推薦型選抜も考えていたので、国語や社会も上位の成績を取れるように、弱点を補強することを心掛けました。
父 親が言わなくても、やるべきことはさっさと済ませるタイプなので、学習面は小学生の頃から本人に任せきりでした。外部模試の結果で医学部を目指すのに充分な成績を取れていたことに加えて、高2からは高校の特待生になれたのもモチベーションアップにつながったようです。
母 高2の秋まで続けた器械体操部は、週4日練習があり本当に忙しそうでした。とはいえ、夜10時には寝ていたので、効率的な時間の使い方に感心するばかりです。
――予備校に入った時期と役立った点を教えてください。
歩乃香 学校では得意科目の授業の進度が遅く、苦手科目は「わからない点がなかなか解決しない」と思っていたので、高2の夏休みに複数の塾の体験授業に参加しました。最初は個別指導塾に通いましたが、宿題を講師の方と一緒に考えるスタイルが私には合いませんでした。「苦手な化学を克服しないと合格は難しい」と気づき、メディカルラボに転塾。押さえるべき点を的確に示す一方、実戦的な問題を次々と与えてもらえたので、確実に力が付いたと思います。
父 受験校の選択や、受験スケジュールの組み立てをお任せできるのも助かりました。私立大学入試は2月前半に集中するうえに、1次試験・2次試験・面接と複雑で、経験のない保護者が把握するのは困難です。受験生の体力を温存しつつ、合否結果をシミュレーションしての采配には、プロならではの手腕だと驚かされました。
歩乃香 覚えることが多い理科は「現役生に不利」と言われているので、専門予備校での先取り学習が不可欠です。医学部は大学ごとにカラーがあり、入試対策も異なります。必要なものだけを取り入れることで、自分を追い込み過ぎない受験ができたと思います。
<必勝アイテム>
入試当日、身に着けていたダイヤのネックレスは、成人のお祝いとして両親から贈られたもの。いつも授業が楽しみだった生物は、おのずと得意科目に。びっしりと書き込まれた「まとめノート」からも気合が伝わってきます。