医学部合格者といっても、最初からデキる子だったわけではない
メディカルラボには、神戸大学医学部医学科に現役で受かったK・Fさんという卒業生がいます。K・Fさんはもともと勉強がすごく苦手で、高校1年生のときに「学校の授業についていけない」「みんなと一緒の授業ではついていけないから、マンツーマンでやりたい」とメディカルラボに相談に来ました。さらに言うと、K・Fさんの高校は進学校ではなく、その高校で医学部を目指しているのはK・Fさん1人という状態でした。
普通の子は、進学校に入れなかった時点で医学部受験を諦めてしまいます。しかも、学校の授業についていけなかったら「もう無理」とみんな思ってしまうでしょう。K・Fさんの偉いところは、それでも医学部に行きたいと強い意志を持ち続けたことです。
ただ、話を聞いてみると、妙なところに丁寧にこだわって時間をかけすぎるなど、真面目すぎて勉強が上手にできていないようでした。
努力しても成績が伸びない子は、決して頭が悪いわけではありません。勉強のやり方がちょっとズレているだけ。ですから、勉強のやり方を修正すれば、努力する子は伸びます。K・Fさんは本当に真面目に努力してくれたので、実際に伸びることができました。
ただK・Fさんの最終的な偏差値は64.5、神戸大学のレベルで行くと残念ながらE判定でした。最後の模擬試験で合格できなさそうな判定をもらったら、普通は諦めてしまいます。しかしK・Fさんは、偉いことに「それでも神戸大学に行きたい」と言って、結果受かりました。
東京大学の理Ⅲなどとなるとまた別ですが、実は医学部医学科というのは、このような努力型で合格を掴む子たちが多いのです。
メディカルラボに通い、合格を勝ち取った生徒の合格体験記はこちらからご覧いただけます。
合格者はみんな「教科書レベルの内容」を丁寧にやっている
では、どんな努力をするとこのように医学部へ行けるのかを見ていきましょう。
闇雲に努力するだけではなく、効率よくちゃんと勉強するには、どうすればよいのか。「効率のいい学習計画」を考える際に大事なことは2つです。
1つは、自分の学力にあった学習計画で進めることです。例えば数学が得意な子と苦手な子では、勉強の取り組み方は異なってきます。もう1つは、志望大学の出題傾向に合わせた学習計画を立てることです。
得意科目については、ある程度は自分の学力にあった勉強ができているでしょう。ただしのんびりとしたスケジュール管理にならないように気を付けてください。共通テストはそれなりの期間を使って準備しないと、高得点は取れません。共通テスト対策をするには、その前に個別試験対策をある程度終えておく必要があります。
一方、苦手科目を医学部受験で戦えるレベルに仕上げるには、どうすればよいのか。難しい内容に取り組もうとする子が多いのですが、必要なのはそれではありません。合格者たちの話を聞くと、やはりみんな「基礎」を丁寧に取り組んでいます。当たり前ですが、基礎が大事なのです。「基礎を固める」というのは、基本問題や典型問題であれば見た瞬間に解ける状態に持っていくことです。
基礎固めの方法としては、学校の教材を使うのが1つの手です。高校の教材は私たち予備校講師から見ても結構良くできており、基本問題が豊富で、入試に出るところはすべて掲載されています。とはいえ、大事な問題であっても、学校の授業では恐らく全部は扱いません。ですから、きちんと自分でひととおり解きましょう。
苦手科目に対しては、よくわからないから形だけ覚えてしまう、公式だけを丸暗記して、それを当てはめて闇雲に解いているといった子がたくさんいます。学校で使っている基本の問題集に取り組んでもらうと、みんなスラスラと解けます。しかし、きちんと理解しているかどうかは疑問です。ですから、私たち予備校講師は「ちゃんと解けているけれど、それ、どうやって考えているの?」「この公式を使うときに大事なポイントがあるけれど、説明できる?」といった具合に確認して、生徒にどんどん話してもらいます。
わかっているということは頭の中で整理できている、つまりは、言語化ができているはずです。言語化できていないということは、まだ理解があいまいな状態です。中途半端なレベルでは入試問題を解く際に使えない場合もあります。
得意科目については、基礎固めと入試レベルの問題集を並行して取り組んでも構いませんが、苦手科目については、きちんと基礎を固めたうえで入試レベルの問題集に着手しましょう。
入試レベルの問題集は、闇雲に手を出すのではなく、できれば志望大学の出題傾向に合わせて選びましょう。このほうが効率的です。問題集を選ぶ際には、赤本の『傾向と対策』というページが参考になります。『傾向と対策』は中学生でも読める内容ですから、志望大学の赤本を早めに買っておき、「作文の出題が多い」「並べ替え問題が多い」などのように、自分が目指す大学の出題傾向をチェックしましょう。
問題の難度も、志望大学の出題傾向に合わせます。出題量は多いかどうか、どの分野がよく出題されるのか、英語の長文問題は科学系が多いとか医療系が多いのかなど、そのあたりもきちんと見ましょう。
最近は問題集も多様化しているので、自分の志望大学の出題傾向に合うものを絞り込んで選べるはずです。その問題集を使って応用力を伸ばしましょう。
入試レベルの問題を一生懸命やりつつ基礎がある程度固まってきたら、過去問に着手してかまいません。医学部志望の場合は高1・高2から過去問にとりかかっている子もたくさんいますので、早めに着手しましょう。
過去問は冊子になっていますが、そのまま使ってはいけません。本番は制限時間内にいかに点数を取るかが勝負になってきます。ですから、過去問冊子は拡大コピーして、本物のテストのように準備し、制限時間つきで解いてください。また、どの問題から着手するかも大事な勝負になりますので、大問1から取りかかろうとしてはいけません。必ず解ききれる問題から着手するのが鉄則です。
現役生は、このようなテスト形式での練習をなかなか実践できていません。医学部受験にはたくさんの浪人生がいます。一度受験しているので入試問題をよく知っています。現役生はそのような子たちと戦わなければならないわけですから、早めに過去問に取り組みましょう。
テスト形式で取り組んだあと、できなかった問題はもちろんできるようにする必要がありますが、過去に出題された問題はもう本番には出されません。解けなかった問題が解けるようになっても、対策としては不十分です。大事なのは、その後に自分の弱点や課題と正面から向き合えるかどうかです。自分の弱点をつぶせば合格できるわけですから、弱点を洗い出しましょう。
医学部は「学力」だけでなく「志望」や「適性」も求められる
さて医学部の場合、他の学部と違って必ず面接試験がある点も大変なところです。勉強以外の準備もしなければなりません。さらに、面接試験は最近非常に難化しています。昔はほとんどの大学では個人面接を、受験生が多い大学だと集団面接を設けるケースが多かったのですが、最近は多様化しているのです(図表2)。
プレゼンを求める大学もあります。東京大学などは事前に与えられたプレゼンテーマで準備をしていきますが、東北大学や名古屋大学の推薦型などは当日になるまでわかりません。受験会場でプレゼンのテーマを与えられ、わずか15分間の準備でプレゼン本番が始まる大学もあります。
プレゼン形式は増えています。獨協医科大学や産業医科大学も今年から導入しました。
また、集団討論も非常に増えています。例えば関西の大学だと、滋賀医科大学の一般選抜や大阪公立大学の学校推薦型選抜で採用されています。
「MMI」は、就職試験のように面接を何回も行う形式です。医学部受験はもはや就職試験ですから、多くの大学では「あなたは医者です。もしこのような問題が起こったら、どう対処しますか?」という内容を尋ねます。関西の大学だと神戸大学の総合型選抜はMMIになりますので、しっかりと準備をしましょう。
実際にどのような面接試験があるのか。具体例として2023年度の東邦大学を紹介します(図表3)。
2023年度の東邦大学では、MMIと集団討論の両方を実施しています。MMIはいかにも医学部というテーマで、iPS細胞、再生医療の話です。一方、医療とは関係のないテーマで問われることも珍しくなく、集団討論では「ゴーギャンの絵を見て話し合ってください」というお題が出ました。ゴーギャンの絵を見て話し合うことは容易ではありません。それでも、合格者たちはきちんと対処したわけです。
他にも、風変わりな面接を行う大学があります。例えば昨年の福井大学では、面接会場で窓の外を1分間見るように言ったのち、俳句を作るよう課題を出しました。なぜ医学部の入試で俳句を作らせるのか?と不思議に思うかもしれませんが、その背景には就職試験としての考えがあります。講演の終盤でも面接について触れたいと思いますので、詳しくはそこでお伝えします。
※本稿の続きは、オンデマンド配信版『医師を目指す君たちへ2024』にて期間限定公開しています。視聴期限は2025年1月31日(金)まで。下記バナーよりお申し込みください。