夫とともに自営業者として働いていた三村さん(仮名)。順調に商売を続けていましたが、夫の急死により生活が一変します。転職や引っ越しを経て、現在は年金とパートの収入でなんとか生活しているという三村さんの生活を例に、貧困生活の実態をみていきましょう。ルポライター増田明利氏の著書『お金がありません 17人のリアル貧困生活』(彩図社)より紹介します。

(※写真はイメージです/PIXTA)
お年玉をくれないおばあちゃんなんて嫌でしょ…年金+パート代で月収15.5万円の68歳女性、“普通”を守るための“ハード”な現実【ルポ】
とにかく子どもたちの負担になりたくない…三村さんの“心配ごと”
このところ心配になってきたのが、自分の終わりと後始末にいくら必要なのかということ。孤独死は嫌だけど長患いも困る。
「お葬式もお金がかかるみたいですね。たまに新聞の折り込みで葬儀屋さんのチラシが入っているのですが、中程度の祭壇でも50万円ぐらいでした。火葬の費用も千差万別で、夫は都営の火葬工場でお骨にしたのでいくらもしなかったけど、民間の火葬場は部屋のランクが分かれていて料金が違うって話です。お坊さんだって30万円ぐらいのお布施を包まないと寝言みたいなお経しかあげてくれないらしい」
通夜振る舞いの料理やお酒がみすぼらしかったら恥ずかしい。そんなことにならないよう80歳まで加入できて葬儀代を賄える小口の生命保険に加入した。
「保証額は100万円。それだけあれば人並みのお弔いができるでしょ。受取人は息子で後始末はよろしくって頼んであるんです。息子も娘も縁起の悪いことをって嫌な顔をしていたけど、そのときになってあたふたしたりお金で迷惑かけたくないですから」
働けるうちは働いて収入を得る。無駄使いは避けて残せるものは残す。
「とにかく子どもたちの負担になることは避けたいんです」
慎ましくてもきれいに人生を終わりにしたいだけなのだ。
増田 明利
ルポライター