増えない給与に止まらぬ値上げ、さらには地震や酷暑、豪雨などなど……考えはじめるとキリがない生活への不安。こんな“生き辛い”現代の日本で暮らす20代~50代の男女4人に、それぞれの生活状況や経済的事情について“赤裸々”に語ってもらいました。ルポライター増田明利氏の著書『お金がありません 17人のリアル貧困生活』(彩図社)より、詳しくみていきましょう。
28歳・大卒男性「社会人になってから年収300万円を超えたことが1度もないんです」…令和の日本に生きる“ワーキングプア”の実態【座談会ルポ】
“ボーナス”はわずか3,000円…それぞれのリアルな懐事情
──収入的にはいかがですか?
吉田:安いですよ、何たって日給9,200円ですからね。4週6休、残業20時間でも月収は25万円で、賞与は出るけどわずかばかりの金額です。この10年は年収320万円がやっとです。
土屋:わたしは日給月給で働いています。4月に賃上げがあったけど1時間単価で見たら15円上がったぐらいでした。月収はやっと20万円というレベル。生活は楽ではありません。
平井:自分も基本的には時給です。アルバイトよりは高くて時給1,460円。月収は23万円前後ですね。わたしは社会人になってから1度も年収が300万円を超えたことがないんです。やっぱりワーキングプアだと思います。
金沢:わたしの場合は夫の扶養の範囲内で働きたいので年収は100万円までと決めているんです。月収だと約8万円ですが、今はこれで満足です。子どもに手がかからなくなったらフルタイムの仕事に復帰するつもりですが。
吉田:今はこれで仕方ないと思っているけど、それでも彼我の差は感じますね。特にボーナスシーズン。日経新聞に大手の平均妥結額が89万円って載っているのを見たときは溜め息しか出てこなかった。
平井:わたしは今まで1度もボーナスをもらったことがないです。公務員や大手企業の人はいいなあって思いますよね。
土屋:募集案内にミニボーナスありって載っていたので期待していたけど、金額は3,000円でしたね。5年働いているけどこの夏は7,000円、力が抜けますよ。
金沢:短時間パートなので寸志も出ない。夫は正社員で管理職だけど金額は大手企業の3分の1ぐらいですかね。
吉田:それだけあればたいしたものだと思うよ。
お金がないと疲れます…幼いころから「貧困層」であると自認
──皆さんはご自身をワーキングプア、貧困層だと自嘲気味におっしゃいますが、どんなときにそう感じるのですか。
平井:思春期からずっと思っています。高3のとき、同級生に大学に行くには金がかかるなあって言ったら、そいつは怪訝そうな顔で、普通その金は親が出すものだろって言ってきたので悔しくなりました。大学は奨学金とアルバイトで何とか卒業できたけど、教科書すらろくに買えず図書館で読んでいました。ゼミの研修旅行や卒業旅行も断るしかなかったので、やっぱり惨めでした。
金沢:わたしも子どもの頃から薄々感じていました。ずっと県営の古い団地アパート住まいで年寄りと品のない人が多くて、友だちに家どこ? って聞かれても恥ずかしくて本当のことを言えなかった。
吉田:生活のあらゆる場面で感じます。体調が悪かったり奥歯の詰め物が取れたりしても、まず頭に浮かぶのは病院代のこと。年末に町会の人が来て歳末助け合いの募金を求められても払いたくないし。家族全員が出払っているのにウォシュレットの電源が入ったままだったらもったいなあって思う。
土屋:一昨年に坐骨神経痛になりまして。整形外科の先生に身体に合うコルセットを作った方がいいと言われたんですが、自費で4万円ぐらいと言われて諦めました。ドラッグストアで売っている既製のコルセットで誤魔化しましたよ。
金沢:お金がないと精神的に疲れますよね。
土屋:四六時中、節約のことを考え、あれは我慢、これも我慢という生活だと息苦しくて、耐えるのはしんどいものね。
(一同苦笑いで頷く)