2024年8月、日経平均株価の大暴落が起きました。その後も株価の乱高下は続いており、落ち着くことができないという投資家も少なくないでしょう。このような状況下で、老後資金の柱となり得る退職金を投資に回していた人たちのなかには「NISAなんてやるんじゃなかった」と後悔しているケースも。本記事ではAさんの事例から、退職金運用と株価乱高下の際の対処法について、CFPの伊藤貴徳氏が解説します。
銀行員の助言どおり、退職金1,500万円で「新NISA」を始めた60歳投資初心者の後悔…暴落時、絶対にやってはいけないこと【CFPが解説】
新NISAの基本知識
2024年1月に開始された新NISAは、国民が資産運用を通じて長期的な資産形成を行いやすくすることを目的の1つとして大幅に改善されました。新NISAは、つみたて投資枠と成長投資枠の2つにわかれ、いずれも運用益が非課税となるという大きな利点があります。
更に大きな改善点として、非課税とされる期間が恒久化となりました。これにより、投資家は長期間にわたり利益に対する税金を気にすることなく資産運用をすることが可能に。投資の上限額も1,800万円まで拡大され、そのうちの1,200万円は成長投資枠に充てることができます。
<つみたて投資枠 >
毎月10万円(年間最大120万円)まで投資が可能
つみたて投資枠は1,800万円まで
<成長投資枠>
年間最大240万円まで投資が可能
上場株式や投資信託が対象
成長投資枠は1,200万円まで
(つみたて投資枠を含めた総額1,800万円の投資が可能)
株価が暴落したら?
新NISAで投資をすることができる投資信託をはじめ、金融商品には価格の変動リスクがあります。基本的に元本が保証されているものではありません。投資先の相場が悪くなると預けた資金が減る可能性もあります。
2024年8月上旬の日本の株式市場の暴落は記憶に新しいことでしょう。このような相場の急変が起こるとパニックに陥りがちですが、そんなときこそ冷静な対応が求められます。株価暴落時に取り得る主な選択肢は、以下のとおりです。
1.ホールド(持ち続ける)
株価が一時的に下落しても、基本的な経済の状況、企業の業績がしっかりしている場合、保有を続けることが適切な場合があります。時間が経てば株価が回復し、成長する可能性もあるからです。
2.リバランス(見直し)
投資をしている銘柄の比率を見直し、リスクの高い資産から安定した資産へ移行することも1つの方法です。たとえば株式の比率を減らし、債券などの比率を増やすことで全体のリスクを調整できます。
3.追加購入(ナンピン買い)
一時の下落でも、自信を持っている銘柄であれば下落したタイミングで追加購入することも選択肢の1つです。これにより、全体の取得価格を下げ、価格が回復した際にはより大きなリターンを得ることが期待できます。
株価が急落すると、一部の方は「パニック売り」に走ってしまうこともあります。しかし、不安・心配・恐怖といった感情に任せた売却は、のちに後悔する結果を招いてしまうことも少なくありません。