「初めての経験」は大人になってからなかなか出会えない

――吉高さんが『光る君へ』で紫式部を演じると発表されたのが2022年5月で、あれから2年3カ月が経ちましたが、当初考えていたまひろ像と実際に撮影が進んで感じるまひろとの違いなどがあればお聞かせください。

吉高由里子さん(以下、吉高):そうですね、今も絶賛撮影中ではあるのですが、一つの作品にこれだけ長く携わったことがないんです。生まれて初めて経験することって、自分から向かわないと大人になってからは出会えないと思うので、今回、こういう巡り合わせで貴重な機会をいただけて、今も「はじめの一歩」を継続中の日々です。皆さんに愛されるキャラクターになればいいなと思って演じています。

それでも、演技としてではなくて目に見える成長としては「書」だと思います。この作品が始まる半年以上前からコツコツ練習をしてきたのですが、やっぱり今見ると最初のほうは目も当てられない字だったと思いますし、まひろも10代であったし、今は30~40歳代を演じているのですが、向き合う時間だけちゃんと応えてくれるものなんだなと改めて思いました。

(C)NHK
(C)NHK

――吉高さんは座長でもありますが、ほかの出演者の方々やスタッフさんに対して意識してやっていらっしゃることはございますか?

吉高:あえて気を遣って声をかけよう、とか、気を配ろうというのはないですね。自分が興味を持った瞬間や雰囲気で話しかけることはありますが、「元気づけよう」とか「やる気を出してもらおう」みたいなのはないです。みなさん大人でキャリアも実力もある方ばかりなので、逆にあわよくば「甘えさせてもらおう」という感じです(笑)。

――いよいよ紫式部として『源氏物語』を書き始めたまひろですが、まひろとして文字を書いていたときと、紫式部として文字を書くときで文字が変わったり、書の練習が変わったりということはありますか?

吉高:道長との文通で漢字を書いたりもしていましたが、仮名と漢字を両方練習してきて、いよいよ集大成が始まるという感覚はあります。現代ではあまり使われていない変体仮名も出てきますし、不思議なのがその変体仮名を読めるようになってきて、身に付いているというかこびりついているのが怖い感覚もあります。わからなかったものを覚えていく楽しみもあるし、できないものができていく新鮮さも感じるし、10代の頃に見ていたような自分の成長が30代半ばになって経験できるとは思ってもなかったので、すごくワクワクすることもあります。