子どもの成長は、親にとって何にも代えがたい喜びではあるものの、教育費の負担は家計にとって大きな支出の一つです。晩婚で子どもを授かった場合、子の大学入学と年金生活のスタートが同時期になることも考えられます。今回は45歳で結婚をし、47歳で子どもに恵まれた佐々木健司(仮名)さんを事例に、子どもの大学入学と年金生活のスタートという二大イベントが同時に到来する家計への対策について、南真理FPが解説します。
「奨学金を借りてくれないか…」晩婚→47歳で「父親」になり17年。年金受給目前の64歳元会社員が、大学進学を目指す我が子に頭を下げた切実な事情【FPの助言】
佐々木さんがしておくべきだったこと、これからすべきこと
佐々木さんのご家庭の場合、どのように大学の教育費と老後の備えをしておくべきだったのでしょうか。
①高齢で子を持つ場合「短期間での資産形成」が必須→対策をしていなかった
前述のとおり、佐々木さんが47歳の時に子どもが生まれました。となると、夫婦両輪という意味では佐々木さんが60歳で定年退職するまでの13年間という短期間での資産形成がマストであり、教育費と老後資金の準備を同時に進めなければなりませんでした。
それにも関わらず、佐々木さんは「結婚=マイホームを持つもの」という固定観念があったため、結婚してまもなく自宅マンションを購入。その時に頭金で貯金をかなり使いました。佐々木さんが80歳になるまで月約7万円の住宅ローン返済をしていかなければなりません。そのうえ、マイカーも所有しています。
妻の仕事復帰は長男を出産して1年後の予定でしたが、保育園がなかなか決まらず復職に3年もかかってしまいました。佐々木さんの両親は高齢であること、妻の両親も遠方に住んでいたため互いの親に頼ることもできませんでした。そのため、妻は子どもが中学生になるまでは時短勤務をせざるを得ず、収入アップもできずじまいでした。
根本的な問題として、佐々木さんは現役時代にそれなりに高収入を維持していたことで、逆に「お金に困ることはない」と過信していました。妻には必要と言われる金額を渡し、自分も使いたいだけ使っていました。夫婦でお金のことをきちんと話し合うこともなく、なんとなく生活をしてきた結果、貯蓄は300万円しかできなかったのです。
②児童手当は使わずに大学資金に充てる→いつの間にか使っていた
児童手当は、子ども一人当たり3歳未満は月1万5,000円、3歳以上から小学校修学前は月1万円(第3子以降は1万5,000円)、中学卒業までは月1万円が支給されます。さらに2024年10月以降は高校卒業まで月1万円支給されることが決まっています。 児童手当はトータルで約200万円貯めることができます。
長男の大学1年目の学費は入学金等も含めると約200万円必要であり、使わず貯めておけば、大学1年分の教育費は児童手当で賄うことができたのです。しかし、佐々木さんに確認すると児童手当はいつのまにか使ってしまったそうです。
③できるだけ長く働く→これからできる対策の1つ
佐々木さんは現在無職ですが、働いて月10万円の収入を得れば、長男が大学在学中の年間収支のマイナスを回避することができることがライフプランのシミュレーションから分かりました(下記参照)。仮に、70歳まで働いたとすると、長男大学卒業時の貯蓄額は約400万円になります。幸いにも佐々木さんは健康には自信があるとのこと。元気で働けるうちは、家計破綻しないためにも働くことを考えるべきでしょう。
■佐々木さんのライフプランのシミュレーション
【長男大学4年間の世帯収入】
世帯収入合計:2,748万円(手取り合計:2,300万円)
(内訳)
佐々木さん収入:480万円
妻収入:1,200万円
佐々木さん年金:1,068万円
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【貯蓄額】
300万円
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【長男大学4年間の世帯支出】
支出合計:2,174万円
(内訳)
生活費:768万円
教育費:650万円
住宅ローン:340万円
保険料:48万円
車輛費:88万円
その他支出:280万円
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【4年間の収支】
約400万円のプラス
長男卒業後、年間の家計収支は車の買替時期を除けば黒字となり家計破綻を回避することができます。