腸と老化の深い関係

100年以上前、ノーベル賞を受賞したイリヤ・メチニコフ博士は腸内の腐敗菌による毒素が老化の原因になると考え、老化と腸内細菌の関係を世界で初めて報告しました。メチニコフが腸内の腐敗菌の働きを抑えるために見つけた食材がヨーグルト。その後、メチニコフは腸内フローラのバランスを整えることが老化や病気を防ぐと考え、生涯ヨーグルトを食べ続けました。ちなみに、先ほど紹介した、京丹後市の長寿研究に参加している高齢者の40%も毎日ヨーグルトを食べています。

現在、腸内細菌が老化におよぼす影響について研究が進んできました。動物実験では若い個体の腸内細菌を老化した個体に移植すると寿命が延びることが報告されています。マウスによる研究では、老化したマウスの腸内細菌を若い無菌のマウスに移植すると、老化の指標となる全身の慢性炎症が誘導されたことがわかりました※3

そうはいっても大豆も発酵食品も日常的に摂取しづらい…

腸を若返らせるには大豆と発酵食品が適していることを述べました。しかし、大豆などの豆や豆製品、発酵食品が苦手という人も少なくないでしょう。無理に食べようとしても継続することは難しいかもしれません。

そんなときには日常の食事に「少し足す」ということを意識してみましょう。少し足すのに、特に適しているのが、近ごろはスーパーなどでもよく見かける「大豆ヨーグルト」です。ヨーグルト特有の酸味が抑えられているので、普段の食事にチョイ足しが可能です。

トーストにはちみつと水切りしたヨーグルトを一緒に塗れば朝ごはんになりますし、みそ汁やキムチ鍋などに入れても案外邪魔をしません。大切なのは、長い期間を掛けて継続するということです。

参考

※1 Nature Aging volume 1, pages295 308 (2021)

※2 京都府立医科大学 COI プログラム「京丹後長寿コホート研究」

※3 Front Immunol 2017;8:1385

内藤 裕二
京都府立医科大学大学院医学研究科
教授/医学博士