せっかくよい企画を思いついてもつい「でも前例がないし難しいかもな…」といつの間にか思考の幅を狭めてしまうことは「会社員あるある」なのではないでしょうか? しかし「働き方改革プロジェクトアドバイザー」の坂本崇博氏は「イノベーションを起こして会社に利益をもたらす役割であるイノベーターが、会社の枠組みにこだわる必要などない」と言い切ります。坂本氏の著書『仕事のアップデート100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋し、見ていきましょう。
イノベーターは「会社の枠組み」を超える必要がある
アイデアを出すときに大切なのが、自由な思考で考えることです。イノベーターの発想は、既存の考え方や仕組みの枠組みを簡単に超えていきます。言い換えれば、イノベーションを生むためには枠組みに囚われてはいけないのです。
しかし、フリーランスやスタートアップの創業社長でもない限り、イノベーターも組織の一員であり、どこかに所属しています。いわば会社に雇われた身です。しかし、このときイノベーターは、「会社員である以上、会社の枠組みの中で活動しなくてはいけない」と考えません。イノベーションを生むための思考を会社という枠に限定することになるからです。イノベーターが考えるべきなのはアイデアであって、忖度ではないのです。
とはいえ、所属しているのは事実であり、それによって制限を受けたり、企画が実現しないこともあります。
そんな状況にあるイノベーターに必要なのは、会社と自分は対等であると信じることです。上司や経営陣とは上下関係があっても、会社と自分は互いの目的のために協力する対等な関係性です。
・会社は利益を生むためにあなたを雇う
・あなたは報酬を得るために会社に利益をもたらすよう働く
これはシンプルな労働者と企業の関係を示していますが、企業への所属意識が高いと、つい「この会社で実現できるとしたらこの範囲か」などと思考の幅を狭めてしまいがちです。しかし、基本的な会社との関係に立ち返れば、イノベーションを起こして会社に利益をもたらす役割であるイノベーターが、会社の枠組みにこだわる必要などないと気づくでしょう。
生粋のイノベーターであれば当たり前すぎてそんなことを考えることもないかもしれませんが、イノベーターとしての在り方とは本来そういうものなのです。会社の枠組みと提案を気にするのは、提案を受ける側である上司であり、経営陣などの上層部、いわゆる会社の枠組みの中で成り立つ職責の人々です。その人たちの多くは、ひと昔前は当たり前だった「社内のリソースで実現できるか」で考えがちです。社外リソースを利用して成功した事例の体験が少ない場合、「社外リソース=コスト増」という意識が強いのが特徴です。
こういった人たちへは、コスト計算をわかりやすくすることが大切になります。アイデアの秀逸さよりも、会社の利益を第一に考える人が最終決定権を持っていることを、イノベーターは忘れてはいけません。
【ポイント】
●イノベーターと会社は被雇用者と雇用主という対等な関係
●イノベーターは会社の枠組みに忖度せずに思考する
●枠組みを気にするのはひと昔前の考え方の上層部
●アイデアの秀逸さよりも会社は利益を重視する
【監修】坂本 崇博
コクヨ株式会社 働き方コンサルタント、働き方改革プロジェクト アドバイザー