テレワークでありがちな悩みが、「仕事とプライベートの切り替えが難しい」「やる気のエンジンがかからない」「集中力が途切れてしまう」といったもの。「集中力が続く人」になるには、どうすればよいのでしょうか? 坂本崇博氏監修の書籍『仕事のアップデート100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)より抜粋し、「集中術」の一部を紹介します。
「集中できる場所」は人それぞれ。だから「集中力を保てる環境」を選ぶ
人が何かに集中している状態というのは、意識を向け続けているとも状態とも言い換えられます。しかし、周囲で何が起きても気を取られずに一か所に意識を向け続けるというのは、なかなかできることではありません。
そのため、集中力を持続するためには、気を取られる要素が周りにない環境に身を置くことが一番と考えがちです。しかし、一人で集中できるとは限らず、人によって異なります。コロナ禍で自宅作業をしていて、集中できないと悩んでいた人が多いことからも明らかでしょう。
人が集中できる環境は様々です。「一人だけの空間がいい」という人もいれば「カフェなどのような、自分と無関係の騒音がある場所がいい」「同僚がいる職場がいい」という人もいます。
一人だけの空間を好む人は、周囲の音や会話などが気になってしまうタイプでしょう。コロナ禍でリモートワークが広まった際に、自分がこのタイプだったと気づいた人も多いでしょう。
「静かな職場だけどそれでも自宅がいい」という人もいます。これは、人の視野は意外に広く左右含めて180度もあり、そのうち意識を集中していない周辺視野で起きている動きを察知して「気になってしまう」ことが原因でしょう。
カフェのように多くの人がいて、雑多な音があふれている空間でも集中できるという人は、周辺の雑音や動きなどを「自分とは無関係なもの」と認識しているタイプです。
一人きりのほうが集中できるように思いがちですが、人は社会的な生き物であり、本能的に孤立することを恐れます。そのため、「自分に危害を加える可能性がない人がいる場所にいる」という安心感を抱ける場所のほうが集中できるのです。
ひとりでも、関係ない人たちに囲まれているわけでなく、昔ながらの同僚と一緒の職場が落ち着く、という人もいます。このタイプは「集団に属している安心感」と「周辺視野で同僚が同じように働いているのを確認して安心する」という心理がミックスしていると考えられます。
集中力を保つために最適な場所が人それぞれなのは、このように周囲の環境をどう感じるかが人により異なるからです。つまり、集中できる場所探しでまずやることは、自分がどのタイプなのかを理解すること。そのうえで場所を選ぶとよいでしょう。
<ポイント>
●「集中」とは意識を一点に向けている状態のことを指す
●ひとりでいると集中力が持続するとは限らない
●集中できるかどうかは周囲の環境をどう感じるかによって異なる
●環境の感じ方のタイプを知ることで自分に合う場所が見つかる
集中力を持続させるには「疲れない姿勢」を保つことも重要
集中力を保つための環境は人それぞれで違うということは前項で説明しましたが、自分にとって集中できる環境であっても、集中力が落ちてしまうことがあります。
それが「姿勢」の問題です。どんなに周囲の環境が良くても、体の疲れとは関係ありません。座り心地のいい椅子であっても、ずっと座って作業を続けていると疲れてきます。体が疲れてしまうと、人の集中力は落ちてしまうのです。
それを防ぐために大切なのが姿勢です。
長時間同じ姿勢だと疲れるのは当然ですが、特に悪いのが「猫背」です。背中を丸めて肩をすくめる猫背の体勢は、人の体の構造から見ても決して自然な姿ではありません。猫背は血行を悪くして体を硬直させ肩こりなどの原因になり、意識していなくても体にダメージを蓄積していきます。
脳は体から「ダメージが蓄積している」という信号を受け取ると、体を動かして血行をよくする行動を促すために肩の張りを感じさせるなどして、集中力を切ろうとするのです。
長時間の作業ではどうしても血流が悪くなりますが、こういった脳の行動を遅らせる、つまり集中力を長続きさせるためには、猫背をやめるのが一番です。
しかし、モニタありきのデスクトップパソコンと違い、ノートパソコンはモニタの位置が低いため、どうしても視線が下に向きがちです。また、最近のノートパソコンは小型化が進んでいるため、モニタをよく見ようと前かがみ=猫背になることも多いでしょう。
これを防ぎ、背筋を伸ばした体勢にする方法としては、ノートパソコンを置く場所を工夫するという手があります。やり方は簡単で、パソコンスタンドを使うこと。モニタの画面が背筋を伸ばして座ったときに目線の高さと同じになるようにするだけです。
背筋が伸びた状態でモニタ画面と目線の高さをあわせる他の方法としては、椅子の高さを変えるという方法もあります。パソコンスタンドがいわば机の高さを変えるという方法であることに対し、椅子の高さを変えるだけなので手軽な方法と言えます。
このとき、視線を下げるために椅子の高さを下げるのではなく、椅子に浅く腰かけて視線を落とすのはNGです。そもそもの目的は背筋を伸ばした正しい体勢にすること。椅子に浅く腰かける体勢ではかえって猫背になってしまいます。
「たかが姿勢」「たかが座り方」と思わず一度試してみましょう。集中力の持続時間が変わることに気付くはずです。
<ポイント>
●脳は、猫背によって体がダメージを受けると解消させようとして集中力を乱す
●背筋を伸ばした体勢で座るのが疲れを軽減するコツ
●ノートパソコンはスタンド利用や椅子の高さ調整で対応する
【監修】坂本 崇博
コクヨ株式会社 働き方コンサルタント、働き方改革プロジェクト アドバイザー
1978年兵庫県生まれ。神戸大学経済学部を卒業後、2001年にコクヨ株式会社入社。“効率化”という観点から会議体の工夫、情報管理方法のアドバイスなどを自ら考案、新規事業として立ち上げる。2016年に総務業務を中心としたアウトソーシングサービスを提供するコクヨアンドパートナーズ株式会社を設立。現在は、コクヨ株式会社にて働き方改革プロジェクトのアドバイザーを務める。著書に『意識が高くない僕たちのためのゼロからはじめる働き方改革』(PLANETS/第二次惑星開発委員会)がある。