【しくみ(2)】ピグマリオン・クエスチョンを利用する

「指示を出すのが苦手」というのも、多くの内向型リーダーが直面する問題です。管理職という立場になった以上、他のチームメンバーを動かし、協力してもらわないことには、成果は出ません。部下に頼み事をしづらく、仕事を自分で背負い込んでしまう人も多いと聞きます。


ちなみに、あなたがこんな部下を持ったら、どうするでしょうか? 言われたことしかやらない新人社員。細かいこと全てに指示を出さないと動いてくれません。職場に課題があることも自主的に考えません。そんな部下に「自分で考えて動けるようになってほしい」というメッセージを伝えたいとします。


そのとき、あなたなら、どんな言葉をかけるでしょうか? 内向型の人ほど、どんな言葉をかけるか困ってしまうかもしれませんが、研究からわかってきた有効な方法は、普段の何気ない会話の中でこんな言葉をかけることでした。「あなたは言われなくてもやる人だと思いますか?」


いきなり言われると驚くかもしれませんが、この言葉を仕事以外の場面で何気なくかけてみるのです。ちなみにあなたが、日常会話の中でさらっとこの質問をされると、どんな感じがするでしょうか? 「はい」「いいえ」どちらで答えてもいいのですが、私たちは2つの選択肢があったとき、よりよい選択肢や、自分がそうなりたいと思う選択肢を選ぼうとする傾向があります。


「もちろん、シチュエーションによっては言われなくてもやりますよ」と答えるかもしれません。その場合は、「じゃあ、どんなときに言われなくてもやる?」と聞いてみると、脳内に「言われなくてもやっている自分」が自然と想像されます。すると、脳は自分でイメージした通りになろうとするのです。


実際にショッピングモールでアンケートをお願いする実験でも、「少しお時間よろしいでしょうか?」と声をかけたグループと、「あなたは人に協力的ですか?」と声をかけたグループで、どのくらいアンケートに協力してくれるかというリサーチがあります。


「少しお時間よろしいですか?」と聞いたグループは協力してくれたのが29%でしたが、「あなたは人に協力的ですか?」と問いかけたグループでは、なんと77%の人が協力してくれたそうです。問いかけるだけで、約2.7倍も実際に行動してくれたのです。問いかけることで相手がそうなろうとする質問法を、私は「ピグマリオン・クエスチョン」と呼んでいます。


ピグマリオン効果とは、期待をかけるとその通りになるという心理現象ですが、次の項目で伝えるとおり、期待をかけることは人によっては命令にも感じられる人がいるため、逆効果になる場合もあります。そこで効果的なのが、命令ではなく相手に問いかけるこの「ピグマリオン・クエスチョン」です。脳は質問されるのが大好きで、問いかけられると答えようとするため、自然に自分でどうなりたいかを決めてくれるのです。