「投資」に対してマイナスのイメージを抱いている人もいるでしょう。しかしながら、現在の日本で投資せずに「現金」を持ち続けていても価値が目減りする一方だと、投資の学び舎「トウシナビ」の代表を務めるFPの櫻井かすみ氏はいいます。かつて投資詐欺被害に遭い、「お金超恐怖症」の「貧乏ママ」だったという櫻井氏による著書『投資への不安や抵抗が面白いほど消える本』(Gakken)から一部抜粋して、現代日本を取り巻く「経済状況」について解説し、投資すべき「金融商品」を選ぶコツをご紹介します。
過去30年、日本人の平均年収は変わってないのに物価は上がってるという現実…令和を生き抜くための金融商品の選び方は?【「無一文の貧乏ママ」から純資産1億円になったFPが出した結論】
現金100万円が20年後は67万円の価値に下がる!?
残念ながら、このままでは現金の価値はどんどん下がっていきます。もしかしたら、多くの方が、インフレはたまたま一時的なものだと考えているかもしれません。
しかし、その考えは大きな勘違い。なぜなら、日本銀行は「毎年2%のインフレ率が理想」と目標を掲げているくらいですから。
これからは、30年以上続いたデフレに終わりを告げ、時代の流れが変わっていくと思われます。
「現金の価値が下がるって……?? 目の前にあるお札が消えるわけでないのに」と疑問をお持ちの方も多いでしょう。今から、理由を具体的に説明していきます。
[図表3]は、元本100万円の20年後の実質的価値を、インフレ率別に比較しています。インフレ率が上がるごとに、現金の実質的価値は下がっていくことが示されています。
例えば物価が20年間、毎年2%ずつ上昇した場合を見てみましょう。現金のまま置いている100万円の実質的価値は、約67万円相当まで目減りしてしまうのです。しかも実際のインフレ率は、2022年、2023年は2%をはるかに上回っていました。
今までは日本は、インフレの逆である「デフレ」が長期間続いていたので、銀行にお金を置いておく懸念点は、あまり意識されてこなかっただけなのです。
特に打撃を受けるのが、我々の給与。
勤め先からもらう給与は、右肩に上がっていますでしょうか? 残念ながら、答えは「NO」。日本の平均給与額は、ここ数年だけでなく、30年間ずっと横ばいなのです。
諸外国と比較しても、この30年の差は顕著。日本人の平均年収は世界的に見ても低く、バブル崩壊以降、日本の賃金水準はほとんど変わっていません。世界的に見ても異例の事態であるといえます([図表4])。
ここ30年の日本の平均給与の推移から浮き彫りになった、日本が直面している課題について見ていきましょう。
国税庁の「令和4年分 民間給与実態調査」によると、日本の平均年収は458万円。過去数年間で年収にほとんど変動がないことがわかります。
次に過去30年間ほどを見ていくと、衝撃的な数字が出てきます。実は30年間、平均年収はほとんど変わっていないのです。1992年〜2018年で見ると、最も高かったのは1992年の472.5万円で、2024年頃と比べるとこの頃のほうが高かったのです([図表5])。
年収が上がっていない=企業の成長が停滞、このことにより日本経済が長年成長していない状態が続いていることがわかります。
年収が上がっていないのに、消費税も社会保険料の負担比率も増えています。
これから現金の価値が上がらず、しかも年収も増えなそうだという現実がある中で、それでもまだ、現金だけを持ち続けていて、果たしていいのでしょうか? かなり危険だと思うのは、私だけではないでしょう。