「影のある人物像が少しでも伝われば」

ーー周明の人物像についてはどんなふうに思われますか?

松下:周明は対馬で生まれながら、ひとりの宋人として生きねばならない複雑な宿命を背負った青年。彼は自分の居場所や拠り所がないことに対する葛藤や苦しみをずっと抱いて、生きてきたのだと思います。日本に帰ることはできないし、けれども生粋の宋人でないことも理解しているはず。宋で優しい医師(くすし)に出会い、なんとか生きるすべは身につけましたが、自分には故郷や帰る場所がないことを心のどこかで引きずり、それに対してコンプレックスを持っているのではないかと思いました。周明が抱える葛藤や壮絶な過去、影のある人物像が少しでも伝われるといいなと思いながら、彼を演じていました。

ーー宋の商人、朱 仁聡(ヂュレンツォン)についてはいかがですか?

松下:朱仁聡は周明を医師として迎えてくれ、面倒をみてくれる“命の恩人”のような存在です。第22回の最後で周明がまひろや為時たちに日本語で話すシーンがありますが、それはある意味、周明にとっても(日本語が話せることを朱仁聡同僚の宋人など周囲に知らしめることになるため)リスクのある行動だったと思います。それでも捕らえられた朱を守りたいという強い衝動に駆られて証人を探し直訴に出るほど、とても大切で心から尊敬する人物なのだと思っています。

(C)NHK
(C)NHK

『光る君へ』とは?

『光る君へ』は、平安時代中期の貴族社会を舞台に、千年の時を超えるベストセラー『源氏物語』を書き上げた紫式部(まひろ)が主人公。のちの紫式部であるまひろが、藤原道長への思い、そして秘めた情熱とたぐいまれな想像力で「光源氏=光る君」のストーリーを紡いでゆく姿を描く。脚本を手掛けるのは、『セカンドバージン』や『知らなくていいコト』『恋する母たち』などで知られる大石静さんで、今回が2度目の大河ドラマ執筆となる。

THE GOLD 60編集部