乳がんの治療中で十分に寄り添えないまま両親を看取ることに

――人生でいちばんつらかったことを教えてください。

乳がん治療と両親の看取りがほぼ重なったことです。私のがんがわかったのは52歳のときですが、翌年、2度目の手術直後に父を看取り、その半年後に母を看取りました。

がん罹患は、死を考えざるを得ない心の状態と、手術、抗がん剤などの副作用による身体的・精神的な苦痛、社会から遠ざかる不安など、想像を絶するつらさでした。

そんな自分の体調が万全ではない中で、両親の介護、看取りがあり、十分に両親に寄り添うことができなかったのではないかと思うととても残念です。

自宅に帰りたかった父を病院で看取ったのは本当によかったのか、と今でも思い起こします。自分の治療と重ならなければ別の対応ができたかもしれないのが心残りです。

がん治療において私の場合は、夫婦で決めた病院で、信頼できる主治医に出会い、治療を受けられたことで、安心できた部分も多かったです。治療中は友人との交流、息子の成長が心の支えでした。見守ってくれた夫にも感謝しています。

お金は“使ってこそ”価値がある

――お金について将来は不安はありますか。

会社設立にはそれなりの資金が必要となりました。会社経営を維持することは大変です。したがってプライベートにも無駄な出費は控えています。夫婦二人の生活費と、イベント時の支出は、年金とこれまでの貯蓄などでまかなう部分も大きいです。

日々の生活に贅沢はできませんが、子どもも独立し、持ち家があるので、大きな心配はなく、コロナ禍も落ち着いたので、会社の業績が伸びていくことを期待しています。

お金や時間の使い方は変わりましたが、お金に対する考え方は変わっていません。教育や体験への投資は惜しまないですし、「お金は天下のまわりもの」で、使ってこそ価値があるものだと思っています。また、その使い方にその人らしさが表れると思っています。

“がん患者”という偏見のない世のなかを目指して活動中

――夢や目標を教えてください。

コロナ禍では思うような活動ができませんでした。会社経営を軌道に乗せることが直近の課題です。「アピアランスケアでがん患者さんを支える」、「ピアサポートの立場からいま不安な患者さんに寄り添い、より質の良いウィッグの提供と情報を発信する」ということが起業の原点であり変わらない目標です。

その先にはがん患者という偏見がない世界、どんなときも誰もが自分らしくいられる世の中になってほしい。その一助にアピアランスケアがなるように活動を続けていきたいです。