物価高が止まらない昨今。新NISA、iDeCo、ふるさと納税など、「資産運用」や「節税」という手段で、将来に備えての資産形成を始めている人が増えています。関心はあるものの、何を選択すればよいかわからない……と悩む人へ、利用すべき制度の特徴や、実際の利用状況について、ファイナンシャルプランナーの石井悠己也氏が解説します。
「住宅購入費」「教育費」「老後資金」…人生の3大支出に備えて、みんな月々どのくらい〈資産形成〉している?【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

将来かかる「お金」のために、今すぐ始めたい「積立投資」だが…

将来のために、お金を増やそう! 投資しよう! 節税しよう! という風潮が年々強まっている印象ですが、皆さんはいかがでしょうか?2024年からNISAが新制度になったこともあり、投資や節税、利用できる制度、そのあたりの相談が日々増えている印象です。

 

特に、人生の3大支出といわれる、住宅資金子どもの教育資金老後資金

 

これらを準備する方法として「投資」を始めたいが、何をいくらから始めたらよいのか、周りは投資にどれくらいお金をかけているのか、ということが気になる人も多いのではないでしょうか。

みんなどのくらい投資に回している?NISAってみんな利用しているの?

2014年からスタートし、2018年には「つみたてNISA」、2024年に「新NISA」と、定期的に制度が変更し、利用しやすくなっているNISA。実際のところ、どれくらいの人が利用しているのでしょうか。

 

私自身、顧客相談を通して、ここ数年での状況の変化を感じています。2021年頃は、顧客のうち、NISA口座を開設しているのは約半数ほどで、「これから投資を始めたい」という人が多かった印象です。しかし、現在は、顧客の約8割近くがNISA口座を開設しており、相談内容も「今後の投資計画をどのように立てていけばよいか」など、より具体的になってきています。

 

[図表1]のグラフからも、NISA口座数が年々増加していることが確認できますが、とくに「つみたてNISA」がスタートした2018年以降に、大きくその数を伸ばしていることがわかります。

 

出所:日本証券業協会HP
[図表1]NISA口座数・累計買付額の内訳と推移 出所:日本証券業協会HP

 

2024年の「新NISA」利用状況は?

2024年から制度が改正され、より使いやすくなったNISA制度ですが、2023年の同時期と比較して、口座開設数、買付額ともに、大幅に数字を伸ばしています。もはや何もしていない人のほうが少数派となってきています。

 

出所:日本証券業協会HP
[図表2]NISA口座設数・買付額 出所:日本証券業協会HP

会社員向け「今すぐできる」運用や節税の仕組み

上記で説明したNISAのほかにも、「確定拠出年金」や「ふるさと納税」など、税制上のメリットがある制度もあります。まずは、制度ごとの違いを解説していきましょう。「住宅資金」「教育資金」「老後資金」、それぞれの資産形成にあたっての「相性のよさ」を、【総評】という形でまとめてみました。

 

NISA(新旧共通)

通常、株式や投資信託などの金融商品に投資をした場合、これらを売却して得た利益受け取った配当に対して約20%の税金がかかります。しかし、NISA口座で投資した金融商品から得られる利益は非課税となります。

 

出所:金融庁HP
[図表3]配当や分配金が非課税 出所:金融庁HP

 

2024年から新制度となり、投資枠が拡大し、制度も恒久化となりました。

 

・積立投資枠120万/年

・成長投資枠240万/年

・口座開設期間の恒久化保有限度額が1,800万(成長投資枠は1,200万まで)

 

なんといっても運用益が非課税なので、利用しない手はありません。ファンドの選び方など、慣れていないうちは不安があるかもしれませんが、最初のうちは、「つみたて投資枠」から利用し、徐々に慣らしていきましょう。

 

【総評】

住宅資金:〇 教育資金:◎ 老後資金:△

 

確定拠出年金(iDeCo、DC)

確定拠出年金には「個人型」と「企業型」があり、前者をiDeCo、後者をDCと呼びます。

 

出所:厚生労働省HP
[図表4]iDeCoの概要 出所:厚生労働省HP


運用時(積立中):非課税かつ全額所得控除 運用中:非課税給付時:60歳到達以降~

 

①年金として受給:公的年金等控除
②一時金として受給:退職所得控除

 

〈メリット〉

●掛け金が全額所得控除になる為、年収が高ければ高いほどメリットが大きい    

●退職所得控除が適用になる為、一定条件で非課税

 

〈デメリット〉

●60歳まで引き出せない    

●個人型は手数料個人負担

 

[図表5]のように、所得が上がれば税率も高くなっていきます。とくに、所得金額900万のラインで、23%→33%と税率が10%も変わるため、節税意識が高い人たちからのニーズが強いのが、確定拠出年金の特徴といえます。

 

出所:国税庁HP
[図表5]所得税の税率 出所:国税庁HP

 

基本的には、年金を増やすための制度なので、短期の運用はできません。現役期間の節税メリットと、60歳まで引き出せないデメリットの両方を考慮する必要があります。

 

【総評】

住宅資金:× 教育資金:△ 老後資金:◎
(所得控除で節税しながら老後資金を確保できる)

 

ふるさと納税

ふるさと納税は、NISAやiDeCoなどの運用の制度とは仕組みが異なりますが、各自治体に寄付をすることで、お礼として返礼品(食品や飲料など)を受け取り、払った額によって寄付金控除が受けられるため、結果的に税金が安くなるという制度です。年収や家族構成などにより、上限が変わってきますので注意してください。※2,000円は自己負担必須

 

出所:総務省HP抜粋
[図表6]ふるさと納税の控除額上限 出所:総務省HP抜粋

 

自分の控除額の上限は、ふるさと納税のポータルサイトで簡単に試算できます。返礼品の種類も多岐にわたるので、どんなものがあるか探してみるだけでも楽しめます。

 

積立投資の場合は「税制優遇」も考慮したい

投資のリスクを抑えるためには、異なる相関関係にある資産に分散して長期で積み立てるという方法をとることが、シンプルかつ確実です。長期積立の制度として、下記の制度は税制優遇を受けられるので、積極的に活用していきましょう。

 

出所:FP Officeセミナー資料より抜粋
[図表7]iDeCo/DC、新NISA、変額保険の特徴
出所:FP Officeセミナー資料より抜粋

 

平均投資額は当てにならない

2024年にはNISAも制度改正となり、投資を促進する制度も充実してきていますが、実際のところ、皆さん、毎月どのくらいの金額を投資に回しているのでしょうか?

 

これに関しては、周りと比べることにはあまり意味がないので、そこまで気にする必要はないかと思います。「世代ごと」「年収ごと」の平均積立額などをまとめているサイトも複数ありますが、サイトごとに調査方法が違うのか、平均額などはバラバラでした。なかには、「手取りの30%を目安に投資額を決める」ことを推奨するサイトもありましたが、単身世帯と子育て世代では状況が同じではないため、リスク許容度などもまったく異なります。


各家庭においての投資適正額などは、ライフプランシミュレーションなどをおこない、算出するのが効果的です。

投資は無理をせず、余力のなかから「長く続ける」ことが大切

2024年はNISA制度が改正され、12月には確定拠出年金(iDeCo/DC)の限度額の引き上げも実施されます。

 

制度的には投資できる枠がどんどん大きくなり、利用しやすくなったことで、加入者も年々増加しています。しかし、投資額が増えるということは、その反面リスクも大きくなるという点も忘れてはいけません。

 

積立投資においては、毎月の積立額よりも、長期で継続することによる恩恵が大きいため、今無理をして積み立てるよりも現在の貯蓄余力を正確に把握し、余力のなかから無理なく長期で積み立てるのがよいでしょう。投資額を算出するためには、ライフプランシミュレーションをおこない、適正な金額を知ることがおすすめです。よりよい将来のために、今からできることを実行していきましょう。
 

 

 

石井 悠己也
ファイナンシャルプランナー


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