高齢の「おひとりさま」が自宅を片づけようとする際、知っておいたほうがいいことがあります。それは、一般社団法人日本ホームステージング協会 代表理事の杉之原冨士子氏によると、「人生を楽しむための片づけ」だそうです。杉之原氏の著書『おひとりさま最後の片づけ やるべきこと・やらなくてもいいこと』より、詳しくみていきましょう。
ポイント(4)「いる」「いらない」をわかりやすく分ける
おひとりさまの片づけで意識して欲しいのは、次の3つです。
(2)必要なモノがどこにあるかわかり、すぐに取り出せるようにする
(3)思い出の品を整理して、すぐに見られるようにする
1.「いる」モノについて
(1)の「転んでケガをしないよう、床に置いてあるモノを取り除く」ですが、敷居、絨毯など段差でつまずく、玄関のマットで滑る、浴室で滑る、階段・脚立からの転落、布団やコードに足がからんで転倒するなど、実は、自宅の中には危険がたくさんあります。
それだけではありません。日常生活をする上で住まいの中を動く線をつないだものを生活動線と言いますが、特に頻繁に移動するリビングやキッチン、トイレなどの生活動線上にモノが置いてあると、転倒の可能性が高くなります。
おひとりさまの片づけは床面をできるだけ広くすることで、動線をスムーズにすることが重要です。使用しているモノや大事なモノ、これら「いる」モノは動線上から移動させます。(2)の「必要なモノがどこにあるかわかり、すぐに取り出せるようにする」ですが、ここで言う「いる」モノは主に2種類あります。
一つは、「日常生活に必要なモノ」で、キッチン用品や生活雑貨、衣類など、生活の中でよく使うモノです。
もう一つは「重要なモノ」で、通帳や印鑑、契約書類、保険証書、年金手帳、マイナンバーカードなどです。こうしたモノを必要なときにすぐに取り出せるようにしておきます。
(3)の「思い出の品を整理して、すぐに見られるようにする」ですが、「思い出の品」とは、「自分にとって大切なモノ」のことです。これまでの人生の中でさまざまな思い出のモノ、大切なモノがあるはずです。
ちなみに、私は息子が幼稚園に入園するときにパッチワークで作ったレッスンバッグを思い出のモノとして箱に入れています。
ボロボロだし息子はもういらないと言っていましたが、これは私にとっての大切な思い出のモノ、頑張って子育てをしていたときのことを思い出し幸せな気分になるモノなのです。その箱を開ければいつでも見ることができます。
あなたは大事な写真をどのように整理していますか? アルバムに整理していますか? お菓子の箱などにそのまま保管している方も多いと思います。スマートフォンに保存している人も多いでしょう。
大事な写真のはずですが、整理していないと取り出して見ることも少ないでしょう。厳選してポケットアルバムに入れたり、写真をフォトフレームに入れて飾ったりして、お気に入りの写真を手元に置いていつでも見ることができるようにするのもいいでしょう。
2.「いらない」モノ―最終的に処分してもいいモノについて
現在使っている場所と使いたい場所を優先して片づけると、最終的に処分していいモノも明確になってきます。
もう何年も使っていないモノ、見ていないモノ、着ていない服などは最終的に処分するモノになります。最終的に処分していいモノとは、どういうモノなのか?
最近、一人暮らしのお母さまが高齢者住宅に入居した息子さんの話しを紹介します。
高齢者住宅には、一般的に生活用品以外はあまり持っていくことはできません。特に、入居に伴い自宅を売却したり賃貸に出したりする場合には、大半のモノを処分することになります。今回お話を聞いた息子さんは、お母さまの入居までに時間がなく、「思い出の品など残したいモノを、ちゃんと母に聞いてあげられなかった」と大変後悔されていました。
最終的な片づけを行うタイミングは、このお母さまのように、高齢者住宅などに引っ越すときか、あなたが亡くなるときにやってきます。そのときの片づけは、お子さんや親族が行うことが多く、「重要なモノ」と「思い出の品」以外は処分するのが一般的です。その際に、今回の息子さんのように後悔したり、「本当に自分が捨てていいのだろうか」と悩んだりされる方がとても多いのです。
「最終的に処分していいモノ」をわかりやすく分けておくことは、とても大切なことなのです。