「終活」に際して、子への「贈与」を検討しているケースも少なくありません。その場合、税金対策として気をつけるべきポイントを、2024年に贈与への課税方法が変わったことも含めて、押さえておきましょう。税理士法人レガシィの天野大輔氏の著書『相続でモメる人、モメない人』(日刊現代)より、詳しく解説します。
税金上は「有利」な〈二世帯住宅〉だが…子には「資金援助をして近くに住んでもらう」ほうがいい、意外なワケ【相続専門税理士の助言】
二世帯住宅の「メリット」「デメリット」
税金だけにとらわれないことが大事
将来の相続を考えた場合、二世帯住宅のほうが税金上は有利になる可能性が高いでしょう。二世帯住宅とは、同じ建物を親世帯と子世帯に分けて暮らす方法です。二世帯住宅の場合、親と同居していたと見なされ、相続の際には小規模宅地等の特例が利用できます。この特例では、自宅の土地の相続税評価額が330㎡まで8割減になります。相続税評価額を大きく下げることができるので相続税を減らす効果があるのです。
親にとって二世帯住宅で暮らすのは大きなメリットがあります。自分の体調が悪くなったときにすぐに駆け付けてもらえて安心だからです。その上、子どもの相続税負担を減らせるのですから一挙両得です。
ただ、私は二世帯住宅で暮らすのが必ずしもベストだとは考えていません。たとえば、選択肢として「子どもに資金援助をして近くに住んでもらう」、「親が二世帯住宅にして一緒に住む」の2つがあった場合、前者のほうがよいこともあると考えています。
二世帯住宅の場合、親世帯と子世帯が1階と2階に分かれて暮らすパターンが多くなりますが、親子げんかをしてどちらかが出て行ってしまうケースが少なくないからです。そこまで状況が悪化してしまうと関係の修復が難しくなってしまいます。
反対に親世帯と子世帯が近所に住んでいて、どこかに引っ越ししてしまったとの話はほとんど聞きません。
前述のように二世帯住宅は税金上のメリットが大きいわけですが、仲がこじれてしまったときに、「小規模宅地等の特例を利用するために我慢して同居を続けよう」と考える人は多くはいません。
そう考えると、将来の相続税だけを考えて二世帯住宅にするのは得策とはいえません。税金だけのために一緒に住むのは仲がこじれてしまったときに精神的なダメージが大きいからです。
都市部に一戸建ての住宅を保有している場合の相続税額は一般的に200万円程度です。また2,000万円程度の金融資産を保有しているのが普通ですから、その中から200万円程度の納税をすれば、それですみます。
その200万円を節約するためだけに、いやいや二世帯住宅に住み続ける人はいるでしょうか。慎重に考えたいところです。
天野 大輔
税理士
税理士法人レガシィ