宅地の「隠れた瑕疵」といえるかどうか…裁判所の判決は?

本件の事例は、東京高等裁判所平成20年5月29日判決の事例をモチーフにしたものです。

この裁判例は、まず、「隠れた瑕疵」の意義について以下のように述べています。

「売買の目的物に民法五七〇条の瑕疵があるというのは、その目的物が通常保有すべき品質・性能を欠いていることをいい、目的物に物理的欠陥がある場合だけでなく、目的物に経済的・法律的な欠陥がある場合を含むと解するのが相当である。」

このように、瑕疵とは、物理的な欠陥だけではなく、経済的な観点からの欠陥も瑕疵に含まれるとしています。

そして、これを本件の事例について検討すると

隣地住民は脅迫的な言辞をもって、誠に理不尽な要求を突きつけていたのであり、このような脅迫罪や強要罪等の犯罪にも当たり得る行為を厭わずに行う者が本件私道のみを隔てた隣地に居住していることが、その上に建物を建築、所有して平穏な生活を営むという本件売買土地の宅地としての効用を物理的又は心理的に著しく減退させ、その価値を減ずるであろうことは、社会通念に照らして容易に推測されるところである。

と述べて、結論として、

「そうすると、本件売買土地は、宅地として、通常保有すべき品質・性能を欠いているものといわざるを得ず、本件売買土地には、本件瑕疵、すなわち、脅迫的言辞をもって本件敷地部分における建物の建築を妨害する者が本件隣地に居住しているという瑕疵があるというべきである」

として瑕疵の存在を認めました。

そうなると、あとは、買主側として、契約の解除まで認められるかが問題となりました。この点について、裁判所は「瑕疵の存在」を認めています。一方で、契約の解除までは認めず、瑕疵による土地の価格の減価分を15%として、売買代金の15%相当額を損害として認めました(地裁では減価分を30%としていましたが、高等裁判所で15%まで減額されています)。

裁判所が減価分を15%とした根拠

土地の減価分を15%として理由について、裁判所は

「一般に、土地や建物の不動産の売買においては、本件におけるようなAによる脅迫的言辞を弄しての地上建物の建築妨害は論外としても、ある程度の迷惑行為を行う住民が近隣に居住していることは、必ずしも珍しいことではないと考えられ、不動産の買主はそのような迷惑行為を行う住民が近隣に居住するリスクも考慮し、近隣の住民や環境についての調査をした上で、購入するのが通常であり、そのようなリスクは、不動産の価格相場形成の一因として織り込み済みのものであるということができる」

「本件敷地部分中に占めるAによる建築禁止要求部分の面積(約3坪)に対応する金額は約600万円となること」

という点を考慮して、売買代金額(5,170万円)の15%を損害額とするのが相当であると判断しています。