ほぼ同時期に夫を亡くした双子のAさんとBさん。遺族年金の件で年金事務所を訪れたBさんは専業主婦だったAさんとの差に愕然としました。そこで本記事では遺族年金の仕組みや、第3号被保険者を選択するリスクについて、角村FP社労士事務所の特定社会保険労務士・角村俊一氏が解説します。
40年間も働いて保険料を納めてきたのにこの仕打ち…夫を亡くした68歳妻が「遺族年金の仕組み」を知って愕然としたワケ【社労士が解説】
遺族年金は妻が受給しているパターンが圧倒的
遺族年金は、家計を支える方が亡くなった場合に遺族の生活を支える制度です。
大きく分けると遺族基礎年金と遺族厚生年金の2種類があり、遺族の範囲がそれぞれ定められています。
死亡した方に生計を維持されていた次の遺族
①子のある配偶者
②子
※子には要件があり、18歳になった年度の3月31日までにあるか、20歳未満で障害等級1級または2級の障害状態にあることが必要。
死亡した方に生計を維持されていた次の遺族
①子のある妻、または子
②子のない妻 ※夫の死亡時に30歳未満であれば5年間の有期給付
③孫
④死亡当時55歳以上の夫、父母、祖父母(支給開始は60歳から)
ただし、遺族基礎年金の支給対象となっている夫の遺族厚生年金は55歳から支給される
※子の要件は遺族基礎年金と同様(孫も同じ)
ちなみに、遺族年金の受給者数を遺族別にみてみると、妻が受給しているパターンが圧倒的に多くなっています。
第3号被保険者を選択するリスクは3つ
厚生労働省「令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、令和4年度末時点での第3号被保険者数は721万人。男女別にみると男性12万人、女性709万人となっており、そのほとんどを女性が占めています。
第3号被保険者制度は、夫は外で働き妻は家事や育児に専念することが一般的であった時代に女性の年金権を確保する目的で導入されました。しかし、時代は変わりました。結婚後も働く女性が増えたこともあり、第3号被保険者制度の見直しを求める声が挙がっています。これが1つ目のリスクです。
次に、老後の生活を考えた場合、夫婦ともに「老齢基礎年金+老齢厚生年金」を受給できた方が安心です。高齢期の収入は少しでも多い方がいいでしょう。妻が第3号被保険者だと老齢基礎年金しか受給できません。共働き世帯に比べ老後の年金収入が低くなってしまいます。これが2つ目のリスクです。
最後に、もし離婚をすれば、年金分割制度があるとはいえ第3号被保険者であった妻の年金は少なく生活は苦しくなります。年金を分割する側である夫の生活も楽ではないでしょう。これが3つ目のリスクです。
Bさんが思ったように、遺族年金の受給に関しては第3号被保険者の方が「お得」かもしれません。しかし、第3号被保険者でいることのリスクを考え、働く(厚生年金に加入する)という選択肢も検討に値するのではないでしょうか。
角村 俊一
角村FP社労士事務所代表
特定社会保険労務士/CFP