ワイン通販などでよく見る「パーカーポイント」がそもそも何を指すのか、点数にはどのような基準があるのかをご存じでしょうか渡辺順子氏の監修書籍『サクッとわかる ビジネス教養 ワインの経済学』(新星出版社)より一部を抜粋し、解説します。
伝説の権威付け、パーカーポイント
ワインの良し悪しを判断する手掛かりになるワイン雑誌や評論家による評価。中でも最も影響力があるのがロバート・パーカーによる「パーカーポイント」で、そこで高評価を得たワインは、瞬く間に価値が上昇します。日本のワイン通販の紹介記事にも「パーカー高得点」というキャッチコピーはよく見られます。
パーカーポイントが支持されるようになったワケ
①100点満点でわかりやすかった
100点満点とし、基礎点50点、味わい20点、香り15点、熟成度などの品質10点、外観5点と、内訳も明確化されているので、誰にとってもわかりやすく納得感がある。
➁ダメなものはダメとはっきり言った
パーカーは徹底した消費者目線で評価を行った。名誉棄損で訴えられたこともあるほど辛辣な評価をすることもあるが、忖度のない正直な姿勢が受けた。
③アメリカ人の大好きなはっきりした味覚だった
パーカーポイントで高評価を得るのは、リッチでしっかりとしたパンチのあるワインが多い。アメリカ人の一般的な好みと合致しているため、参考にしやすかった。
④ワインを知らないアメリカ人の指標に
ヨーロッパの格付けは専門的すぎて難解と感じていたアメリカ人にとって、同じアメリカ人であるパーカーの言葉は理解しやすかったことから、絶大な支持を得た。
高得点を狙うためにわざわざ味を変えたワインも。結果、価値が爆上がり
<パーカー100点で価値が爆上がりしたワイン>
●小さなガレージ生まれのシンデレラワイン、「ルパン」
●元オリンピックスキーヤー夫婦の手がけたワイン、「スミスオーラフィット」 etc.
少量生産でもともと希少だったルパンは、1982年産がパーカーポイント満点を記録したことで、さらに入手困難となりました。また、2009年に満点を獲得したスミスオーラフィットは、出荷価格が97ユーロから、翌年には234ユーロまで高騰しています。
そのため、高得点を得ようとパーカーの好みに寄せて造るワイナリーも出現。「パーカリゼーション(パーカー化ワイン)」という言葉も誕生しています。
渡辺 順子
ワインスペシャリスト
1990年代に渡米。フランスへのワイン留学を経て、2001年大手オークションハウス「クリスティーズ」のワイン部門に入社。同社初のアジア人ワインスペシャリストとして活躍する。09年に退社し、プレミアムワイン株式会社を設立。ワイン普及の活動を続けている。現在はメキシコ在住。
著書に『世界のビジネスエリートが身につける教養としてのワイン』『高いワイン』(ダイヤモンド社)、『日本のロマネ・コンティはなぜ「まずい」のか』(幻冬舎ルネッサンス新書)、『語れるワイン』(日本経済新聞出版)等がある。