身内が亡くなると、悲しみに浸る間もなく、遺族を待ち受ける「年金」の停止手続きや相続関連の手続き。申請期限が設けられているものも多いので、注意が必要です。いざというときに焦らないためにも、相続実務士である曽根恵子氏の著書『身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本』(扶桑社)より、故人の年金に関する手続きについて詳しくみていきましょう。
家計を支える身内が亡くなると支給される〈遺族年金〉だが…意外とある「もらえないケース」とは【相続実務士が解説】
故人に生計を維持されていた遺族が受給できる「遺族年金」
遺族年金は、年金加入者が家計を支えていた場合、その死によって遺族の生活が不安定にならないように、遺族に支給されるお金です。受給資格は、故人の加入していた年金の種類によって異なりますが、遺族年金を受給するための資格は「故人に生計を維持されていた」こと。言い換えれば、故人が亡くなるまで生計を同じくしていた(同じ家計で生活していた)人のことを指しています。また、遺族年金の支給は原則として、遺族の前年の年収が850万円未満であることが要件となっています。
しかしながら、故人の死亡時に年収が850万円以上あっても、おおよそ5年以内に、遺族が退職や廃業によって、その年収が850万円未満になると認められるような場合は、支給の対象となります。
遺族年金は受給決定後に資格が消失することもある
遺族年金には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類があり、故人の年金の加入状況で、そのうちの1つ、もしくは両方が受給できます。年金は「国民年金」と「厚生年金」の2階建てになっており、国民年金であれば「遺族基礎年金」が、厚生年金であれば「遺族厚生年金」が受け取れます。故人が両方に加入していれば、遺族年金も2階建てとなるわけです。
ただし、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の受給資格には違いがあり、「遺族基礎年金」の場合は18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子(障害等級1級・2級がある場合は20歳未満の子)、その子をもつ故人の配偶者が対象です。「遺族厚生年金」の場合は、妻や子、孫、55歳以上の夫、父母、祖父母が対象となります。
しかし、子どものいない妻が夫の死亡時に30歳未満だった場合は、5年間しか受給できないという規定もあるため、年金事務所に確認しましょう。
気をつけなければならないのは、遺族年金は、受給決定後、生涯にわたって受け取れるものではないということ。状況によって資格が消失することもあるので、注意しておきましょう。
「子」は、18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していないども、もしくは20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の子どもに限り、遺族基礎年金を受給できます。3人目以降は1人につき7万6,200円が加算されます。
夫を亡くした妻が65歳になり中高齢寡婦加算から自分の老齢基礎年金に切り替わるとき、老齢基礎年金の支給額が少なくなるケースがあります。それをカバーするため「経過的寡婦加算」が加算されます。
曽根 恵子
株式会社夢相続 代表取締役
相続コーディネイター