増えない給与、減り続ける年金、にもかかわらず、平均寿命はどんどん延びている日本人……こうした状況で、多くの人は「老後に対する不安」を抱えています。そこで今回、年金受給額を増やす方法として「年金繰下げ受給」をすすめる理由と、そのほか老後の資産を増やす方法について、『老後のお金、本当に足りますか?』(オレンジページ)著者で家計再生コンサルタントの横山光昭氏が解説します。
年金受給額を増やす“おトクな制度”だが、利用者はわずか「1.2%」という現実…お金のプロが「年金繰り下げ受給」を激推しするワケ
受給額は増えるが…多くの人が「繰り下げ受給」を選ばないワケ
年金額が大きく変わってくる「繰り下げ受給」ですが、実は現在は利用者が少ないのが実情です。令和3年度の厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業年報」によれば、繰り下げ受給を選択しているのは厚生年金受給者で1.2%、国民年金のみの受給者で1.8%※となっています。
※令和3年度「厚生年金保険・国民年金事業年報」
徐々に増えてきてはいるのですが、なぜ繰り下げ受給をしている人が増えないのか? それは「いま得られる利得を優先したい」と思っている人が多いからでしょう。
支障がないならぜひ「繰り下げ受給」検討を
しかし、実は一番金銭的にお得なプランは「75歳まで問題なく生活できるような収入もしくは貯蓄を確保し、年金を目いっぱい繰り下げてから受給」というものなのです。
もし健康上の問題がなく、長生きしそうだという人は、老後のライフプランを考えるときに、「繰り下げ受給」を前提に考えてみることをおすすめします。
老後資金づくりに最適?…誰でも加入でき、節税効果が高い「iDeCo」
iDeCo(イデコ)※とは、2001年より制度が始まった「個人型確定拠出年金」のこと。
厚生労働省があつかう「年金の仕組み」を3階建て構造とすると、iDeCoは「3階」部分の制度。1階部分が「国民年金(基礎年金)」、2階部分が「厚生年金」、3階部分が「企業年金」「国民年金基金」「個人型年金(iDeCo)」です。毎月一定額を積み立てていき、60歳以降に受け取ることができる制度で、つまり「自分のために老後資金を積み立てる制度」と言えます。
iDeCoと通常の年金が違うのは、iDeCoは「自分で運用方法を選ぶ」ものであるということ。運営管理機関が選定する運用商品の中から、自由に組み合わせて運用します。通常の貯金と違い、運用益が見込めるところが最大のメリットと言えるでしょう。どんな人でも加入が可能です。
※ iDeCo……2016年よりスタートした個人型確定拠出年金で、公的年金にプラスして給付を受けられる私的年金。
〈iDeCoの特徴〉
●会社員やフリーランス、専業主婦(夫)、どんな人でも加入できる。
●厚生年金保険に加入している人(第2号被保険者)は60歳以降も加入可能。国民年金加入者は、60歳以降も任意加入しているなら加入可能に。
●掛け金は毎月5,000円からで、1,000円ごとに設定できる。ただし加入区分によりかけられる金額に上限がある。
●原則60歳から受け取ることができ、75歳までの間で自由に選ぶことができる。一時金で受け取る、年金で受け取るなど受け取り方法を選ぶことができる。