人生における出費の中でもかなり大きなウェイトを占める「住宅購入費」と「子どもの教育費」。「人生100年時代で老後が長くなった分、人生におけるイベントも後ろ倒しになる傾向があり、50代の段階で十分な老後資金が準備できていないケースも少なくない」と、ファイナンシャルプランナーの長尾義弘氏は言います。長尾氏の著書『運用はいっさい無し! 60歳貯蓄ゼロでも間に合う 老後資金のつくり方』(徳間書店)より、どうすれば、60歳から老後資金を作ることができるのか、詳しく見ていきましょう。
老後資金どころじゃない!…住宅ローンと教育費に追われる年収700万円・50代夫婦、〈退職金1,200万円〉と〈再雇用〉で備えても、待ち受ける「貯蓄ゼロ」の絶望【FPが起死回生策を助言】
70歳まで働くと…老後資金のゴールが見えた!
山川さんの会社では、再雇用を70歳まで延長できるように、今後は方針を変えていくとのこと。これも時代の流れでしょう。山川さんは70歳まで働き続けることができそうです。
厚生労働省の「高年齢者の雇用状況」(令和4年)の調査によると、66歳以上が働ける制度のある企業は40.7%です。現在50歳の人が65歳になる15年後には、70歳定年が当たり前になっていると予測されます。
実際、元気なうちはできるだけ長く働きたいと考えている人が多いようです。こうすると、老後資金は89歳までマイナスにならずにいけます。いよいよゴールが見えてきました。あと一歩です。
夫婦とも繰下げ受給でバラ色の老後生活を
さて、最終のプランですが、70歳まで働くのであれば、その間の生活費は給与と企業年金でなんとか持ちます。つまり、70歳までは年金に頼らないで生活できるわけです。そこで、年金の70歳までの繰下げ受給を検討してみましょう。
・山川さん
基礎年金 190万円から269万8,000円にアップ
厚生年金に加入するため、さらに10万円アップ
合計 約280万円
・晴代さん
基礎年金 70万円から99万円にアップ
・夫婦の合計 379万円
・年間の生活費 360万円
毎月約1万6,000円の黒字。ついに、無限のマイナスから脱出することがかない、85歳の時点では、なんと1,000万円の余裕資金もできる計算です。
収支のバランスを改善することがきました。毎月約1万6,000円の黒字になっているので、山川さんの小遣いが増えるかもしれませんね。
これで山川さんは、お金の心配をせずに暮らせるようになります。
このプランニングは、山川さんが70歳まで会社で働く前提で作っています。しかし、山川さんには、キャリアアップという手もあります。「若いうちならともかく、いまさら」なんて言わないでください。40年間勤め、定年退職したあとも10年働く。これは長いですよ。与えられた仕事をこなすだけでは、働くことが苦痛になってくるかもしれません。
うまくキャリアアップに成功すれば、60歳以降にやりがいのある仕事を見つけ、さらには収入を増やすことも可能です。嬉しいことずくめだと思いませんか。50代は飛躍のための助走期間だとも言えるのです。
長尾 義弘
ファイナンシャルプランナー