“安すぎる国・ニッポン”で加速する「経済格差」の実態

ジャーナリストの小林美希氏が2022年11月に出版して話題になった『年収443万円安すぎる国の絶望的な生活』(講談社現代新書)では、平均年収443万円、平均年齢46.9歳という「民間給与実態統計調査」(2021年、国税庁)の公表数字の年齢は、ちょうど就職氷河期世代と重なるそうです。

年収の平均は443万円ですが、実は二極化が加速していると言います。正社員の平均年収は508万円、正社員以外は198万円なのです。

443万円という平均年収は、2008年のリーマンショック以降、ほとんど上がっていない水準なのに、「そんなにもらっていない」という声が多いのは、正社員以外の働き方をする労働者がどんどん増えて、二極化が加速しているためでしょう。

直近7年間の動向から見ても、日本の少子化、人口減少のトレンドは、とどまるどころかさらに加速する可能性が高く、年金財政はこれまでの予測を超える厳しい状況になっていくのは確実だと思います。

日本の平均賃金の低迷は、「失われた20年」「失われた30年」などと言われていますが、それはあくまで「平均賃金」の話。これだけ長期間、平均賃金が上がらないのは先進国では唯一日本だけで大問題なわけですが、実はその間に労働人口の高齢化が進んでいるのです。

「労働人口が全体として高齢化しているのに、平均賃金が変わらない」というのはどういうことかというと、「同じ年齢の賃金は減少している」ということです。

実際に、団塊ジュニア世代は40代後半の実質年収が、10年上のバブル世代に比べて150万円も少ないのです。この数字は驚きでした。40代後半から50代前半という、教育費の負担が最も重くのしかかる大事な時期は、本来は年収が高くなっていくべきタイミングなのです。

そのタイミングで「年収が150万円も少ない」というのはとてつもないインパクトで、子どもを持つことを躊躇しても不思議ではありません。そして、実際にその下の世代の行動がそうなったために、2016年から出生数の減少が急加速したのです。

この団塊ジュニア世代がいよいよ50代に入り始めました。今後、名目賃金は上がっていくにしても、果たして物価上昇分を考慮した実質賃金まで上がっていくでしょうか? そこまで上がるのは難しいと私は予測しています。

であれば、もう「副業」によって自らの収入を増やしていくしか対抗策はないのではと思うのです。

大杉 潤
経営コンサルタント/ビジネス書作家/研修講師