年金制度の将来展望から見える日本の現状

世の中にある統計データ予測の中で、最も外れることが少ないと言われているのが人口統計です。

戦争やパンデミックのような天変地異が起こらない限り、人口予測は大きく外れることがありません。株価、為替、金利やGDP成長率の予測がよく外れるのとは対照的です。

そうした中で、日本の人口減少、少子化、高齢化、労働人口の減少がいずれも今後、急加速していくことは確実です。さらにこのトレンドが少なくとも30~50年単位の長期にわたることも間違いないでしょう。

以上のことから言える日本の年金制度の将来展望のポイントは、次の3点です。

1. 年金保険料を負担する労働人口が減少する一方、新たな年金受給者は当面増え続けるため、年金財政が逼迫する

2. 人口構成の歪みに対応するために導入された「マクロ経済スライド」という調整措置により年金受給額は物価上昇率ほど上がらず、実質の年金収入は減少する

3. 年金収入の金額が現役時代の平均手取り収入額の何%に相当するかを表す「所得代替率」は、現在の61.7%から50%(現役時代の半分)に下がっていく

日本の年金制度は、これまでも人口構成の変化に対応するために、何度も改定を重ねて複雑な制度になってきた歴史があります。もはや専門家でもすべての制度変更を正確には記憶できないほどです。

これらの3点は、これまでの年金制度改革の過程で公表されてきたものですが、5年に1度の「財政検証」と呼ばれる、年金制度が持続可能かどうかのチェック(健康診断)で今後も制度変更が議論されることになります。ちなみに次回の財政検証は2024年の予定です。

厚生労働省は、人口推計や経済成長率などの前提条件ごとに毎回、6パターンの年金財政見通しのシミュレーションを公表しているのですが、現実の実績値は過去に予測した「最悪パターン」に近い数字で推移しているのです。