毎年この時期に美しい花をつける「桜」。日本の国花であり、日本を象徴するシンボルとして多くの人から愛されていますが、なぜ日本人は桜に心惹かれるのでしょうか? 山陰地方で呉服店を経営する、日本文化にも詳しい池田訓之氏が、桜の豆知識を紹介します。
桜柄の着物と季節
強く儚い桜は、筆者が日々扱っている着物の柄としても、もちろん大人気です。そしてお客様からよく「桜の柄の着物は、春先しか、着れないのですか?」と、着る季節についての質問を頂きます。
着物や帯に描かれている桜に、葉に枝や幹があり写実的なものであれば、そこに桜が存在しているようなものですから、桜が散り始めたら着ることを控えましょう、儚さが魅力の桜には似合いません。
具体的にはいつごろ着てもよいのでしょうか。着る季節は先取りで構いません。人は後ろ向きじゃなくて、前向きに生きたいもの、だから着る着物の柄も、季節先取りで着るのが、着る人も周りの人の気分も高揚させてくれるからです。地域によって差はあると思いますが、ざっくりといえば、1月から満開時の4月ごろまででしょうね、散り始めたら控えたほうがよいかと思います。
しかし、桜の花びらだけが描かれているものなら、ロゴマークなどと同じで草木を離れたひとつのデザインなので季節は選びません。また写実的な柄であっても、ほかの季節を感じさせる草花が描かれていれば、季節の幅は広がります。実際、桜という木だけが枝や幹までも描かれている着物というのはあまり見かけません、多くの着物には、季節を選ばないようにいろんな季節の柄が意図的に描かれているものです。
春先の小旅行には、箪笥のなかの、桜柄の入った着物で出かけましょう。着物は、重ねた年輪を美しさとして表現してくれます。子育てに費やした何十年を終えて、再び自分を見つめる余裕ができたこれからを、着物で楽しみたいと、弊店の開催する小旅行には、笑顔で活き活きとした人生経験豊かな着物美人が、毎回たくさん参加されています。
儚いだけではなく、命綱として生きる力を満たしてくれる桜柄の着物で、いつまでも、明るく元気に人生を謳歌いたしましょう!
池田 訓之
株式会社和想 代表取締役社長