今もなお愛される、90年代に登場した「大人気スイーツ」

1990年代のブームは、まだたくさんあります。『ファッションフード、あります。 はやりの食べ物クロニクル1970-2010』と『増補改訂版 西洋菓子彷徨始末 洋菓子の日本史』(𠮷田菊次郎、朝文社、2006年)で確認していきましょう。ヨーロッパのスイーツで、『Hanako』が1991年に推したのは、生クリームを使い濃厚なプリンといった味わいのクレーム・ブリュレです。

こちらは表面に砂糖をまぶし、バーナーであぶったフランス料理のデザートで、ポスト・ティラミスと期待されましたが、それほど大きなブームにはなりませんでした。その後、2001年に公開されたヒット映画『アメリ』で、主人公のアメリが好きなこととして、クレーム・ブリュレの表面のカラメルを砕く行為が挙げられ人気になります。

大阪のチェーン店「りくろーおじさんの店」で売り出した、「焼きたてチーズケーキ」も人気になりました。

1992年にはカルト的な人気を誇ったアメリカ映画『ツイン・ピークス』で主人公のFBI特別捜査官が朝食にするチェリーパイが、ごく短い間、流行しました。同じ年、イタリアンデザートのパンナコッタも人気になりました。

フランスのボルドー地方の伝統的なお菓子、カヌレも流行しました。こちらはパン屋で売られ続け、ここ3、4年、専門店が出現し再流行しています。大阪で創業した専門店「マネケン」から流行が広がったのは、ベルギーワッフルです。

日本ではそれまでワッフルといえば、新宿中村屋がクリームパンと同時に発売した、柔らかい生地にカスタードクリームを挟んだものでしたが、このとき広がり定番化したのは、固く焼いたワッフルです。東京にも銀座などに進出し、長い行列ができました。

フランスのブルターニュ地方で、残ったパン生地でつくったのが、クイニー・アマンです。こちらも、フランスパンを売りにするパン屋などで今でも買うことができます。さらに、マカオのエッグタルトも一時的に流行しました。最近は、台湾スイーツとしてタピオカ・ミルクティーの店などが売っていて人気があります。

カスタード生地のスイーツはどうやら人気が高く、クレーム・ブリュレやカヌレ、エッグタルトがこうした生地を使っています。プリン自体も、1993年に名古屋から東京に進出した「パステル」のなめらかプリンが人気になりました。トロトロのなめらかプリンはやがて、プリンの定番になるに至りますが、2019年頃から再び昔懐かしい固めのタイプが流行し始めています。そこには、昭和スタイルの喫茶店ブームも影響しているようです。プリンは、喫茶店の定番メニューの一つですから。

阿古 真理

作家・生活史研究家